Salop le typhon, le pire!2011/09/05 20:22:10

睡眠不足と疲労で意識朦朧がピーク(って何書いてんだあたし)になった金曜日、職場の外へ一歩出たとたん、緊張の糸が切れて本当にそのまま路上で寝込んでしまいそうになったが、ひゅうううううううううという恐ろしげな風の音と、取引先の敏腕営業ウーマンがけたたましく鳴らしてくれたケータイの着信音のおかげで、なんとか自宅までの道のり、時間にして20分、歩き抜くことができた。私のまちでは金曜の夜の風がいちばんすごかったので、前エントリで書いたようなオバサン右折車にはねられました事件とか、まだ幼い頃に家のトタン屋根が飛ばされた記憶とか、今はもうアスファルトの下になってしまった表通りを流れていた川が豪雨のために氾濫して、おまけに川べりの柳が風でなぎ倒されて流されて、通り沿いの家は床下浸水と柳の枝葉のダブルパンチだったとか、そんな古いアルバムの断片のような絵が脳裏に浮かんでは消えた。でも、その恐ろしい風に耐えながら、夜中、帰路についているあいだじゅう、その敏腕営業ウーマンが、自分の部下のふがいなさを愚痴るのである(笑)。その彼女の部下という人物には、私も日々ほとほと手を焼いているので、敏腕営業ウーマンの愚痴は痛いほどよくわかる。私はその部下嬢から見ても下請けの業者の人間なので、部下嬢が根拠なく高飛車に出たり、根拠なく自分のミスを人のせいにしたり、根拠なくただただ締め切り間際になって人を追い立てることしかしないというのも、立場ゆえに理解できる。しかたがないのである。アホはもう直らない。直らないアホでも私の職場にとっては大顧客の担当者であるゆえ、世界中がこの部下嬢をアホだと認めても私は部下嬢に逆らえないのである。で、先の敏腕営業ウーマンは、そうした私の苛立ちをよくわかってくれる人であるので、全然仕事のできない部下のせいで、よく働く下請け三文ライターが機嫌を損ねないように配慮して、自分の部下を罵倒しているのである(笑)。気持ちはありがたいがだからって同調することは、これまた下請けの悲しさでできないのである。少しは私も部下嬢のしでかした瑕疵のもろもろを「チクル」くらいはするが、どうやら、敏腕営業ウーマンによると、彼女のところの社内では、私がこうむっている程度の「被害」では済んでいないようなのだ(笑)。そりゃそうだろなー。あの部下嬢と組んで仕事するというのは、ある意味、首輪かハーネスつけてチワワかミニチュアダックスを連れまわして仕事しろって言うようなもんだよな。どういうことが言いたいかというと、つまり部下嬢はこっちの話を理解しないのである。こっちの話とは全然別の次元の返事がくるのである。話のキャッチボールができないのである。それでいてわかった気でおられるようでどこかマイペースなのである。従順に見せて従わないのである。だったらそんなの社員として雇っておくなよといいたいが、そこは大会社の悲しさで雇ってしまったもんは無碍にクビにはできないのである。私の勤務先では経営者が「こいつ嫌い」と思ったらしゃーっと解雇される。もちろんかたちは自主退職で。件の部下嬢なんて、わが社なら雇用はありえない人材である。しかし、そのように異星人並みの「できなさ」であるからして、敏腕営業ウーマンも私も、部下嬢の「こんなに仕事できませんエピソード」を百も列挙して笑い飛ばしてストレス解消しているといえる。不健康だが、これも、歯車の、とあるひとつのかたちである。会話のかみ合わない人間が一人いるけれど、そいつのかみ合わなさを「ダシ」にして、つまりいろいろうまくいかないことの理由をそこへ全部掃き溜めて、そうしておくことでなんとかかみ合ってまわる歯車。考えてみれば、取引先だろうと部下だろうと、あまりによくできる人材がいたら、それはそれでしんどいじゃないか、だってあたしだってデキナイ子だもんさ。そんなふうにオチつけながら、暴風に耐えて帰宅した。家の中ではバリバリみしみしがたがたと家のどこの部分が音を立てているのかわからないけど、そんな音と、興奮した猫が、一晩中やかましかった。私は暴風と敏腕営業ウーマンの電話に支えられながら、少し疲労回復して、翌日、乾かないとわかっているけどせなしゃあない洗濯をして、掃除をして、合間合間にごろごろした。美容院を予約していたので重い体を引きずって行った。予約客のほとんどが台風を理由にキャンセルしたといっていた。貸し切り状態の美容室で同年代の美容師と懐メロの話題に花を咲かせては、若手美容師に知らんやろ~と自慢するけど、どうでもよさげな表情の若手美容師はヘッドから肩へのマッサージが上手なのであまりの気持ちよさにあまり昭和ネタでいじめるのはやめてあげようと思ったりするのである。軽く綺麗になった髪をなびかせといいたいが、外へ出れば超スローペースの台風はあいかわらず時に突風時に大雨を繰り返してそのあたりをうろうろしておるようなのであった。日曜は順延された高校の文化祭が開催される予定だがどうかなとちょっと心配する。でも、私たちの心配はその程度であった。私たちのまちはほんとうに被害がない。今回の12号がもたらした被害の最たるものは、二条城の壁が剥がれたってだけだった。平和だ。だがニュースを見て、近隣他県が被った容赦ない台風の爪痕に言葉もない。半年前に私たちは未曾有の大震災を経験した。私たちはつい災害をその人的被害の規模で語るが、失われた命の重さは同じだ。こんちくしょう台風め馬鹿ていねいにゆっくりゆっくり嘗め回すようにわが郷土を削りとっていきおってからに。こんなことがあると、取引先の担当者が極めつきのアホだったとしても、生きてるだけで幸せじゃないかと思わざるを得ないのである。合掌。