Bon anniversaire ma chère!!!2012/02/13 23:53:08




『16歳 親と子のあいだには』
平田オリザ編著
岩波ジュニア新書567(2007年)


今日は私にとっていちばん特別な日である。
ひとり娘の誕生日である。
2月13日。
世界にたったひとつしかない宝石である私の娘が生まれた日。
と、いうよりも。
私が、この私が世界に二つとない宝石を産んだ日である(笑)。
つまり、私にとって空前絶後の痛みを味わった日である。
生涯、アレを超える痛みにはもう出会わないであろう。
そりゃ、あーた、痛かったのなんのって。
いま、体のあちこちガタがきていてそこらじゅうが痛いし、ちょっと飲み過ぎ食べ過ぎなんかすると途端にひどい頭痛腹痛が来るし、風呂の蓋が足指に落ちてきたときも痛かったし、階段踏み外して腰打ったときも痛かったし、スライサーで指削った時も痛かったけど、赤子の頭が産道を通ったときのあのアレはそんなもんアータよく生き延びることができたわアタシとマジで思ったんだから本当に痛かったのさ。それほどまでに痛かったんだから無事に育ってもらわんと割に合わないのさ。痛みに耐えた甲斐があったわとアタシに思わせてくれるほどピカピカきらきらに熟してもらわなきゃ困るのさ。

そんなわけで、山積みの仕事を放り出して私はバースデーカードを手づくりし、髪を束ねるためのシュシュも手づくりし、例によって、何冊かの本を贈ったのである。そのうちの一冊が本書だ。

タイトルおよび表紙イラストの出来がいい(ま、私の好みというだけだが)わりには、つまらない本である。すまん、さなぎ。

ま、そりゃそうだ。本書はさまざまな分野で活躍中の著名人が自分の16歳当時を語っているのだが、そこそこの年齢の人たちばかりだから、当然彼らの16歳の頃の社会は現在との乖離甚だしい。そして、時代がいつであれ、16歳の少年や少女とその親の間に存在する関係性というもんは、どんなに平凡な関係性であっても、各自の性格が地味であってもありきたりであっても、個別の家庭事情が異なるとかそんな次元とはまったく関係なく、それぞれに特有でたいへんに親密で、元来外に向かって語られる必要のないものである故に、本にするからといっていきなり滑らかに澱みなく語られるような性質のものではないのである。だから、人んちの押し入れの中を、「覗いていいのそれ。別に見たくもないんだけど。ま、何か面白いもん隠してあるかもしれないな、でもどうってことないに決まってるし」といった気持ちで覗き見するのに似て、期待もしなかったけどやっぱ実際読んでみるとかなりつまらない(笑)

それでも、昔の16歳って親とはこうだったのね、というようなことをちょっぴりでも感じてくれたらオンの字である。

ところで先月は私の誕生日があった。
またひとつ歳をとったわいと愚痴る私に、彼がこう言った。
「年をひとつとったことではなくて、生まれたことを祝福する日なんだよ、誕生日は」

そうだよね、そうなんだ。
私の娘も私の母も、猫も、アイツも、コイツも、弟も、その嫁も、甥っ子も、友達も、みんな、みんな、みんな、その存在は奇跡さ。私の目の前にいてくれて嬉しいよ。君が、キミタチが生まれたことを祝福したいもんだよね。

ハッピーバースデー、さなぎ。

富山の夜