編集者2007/04/17 02:02:52

編集者の仕事とは何だろう。
何を編集するのか、その対象物、制作物によっても仕事の内容はもちろん異なってくるけれど、半ばできあがりかけているものをよりよい形にして完成させること、また、絶妙な組み合わせと配置をすることによって個々の完成品から100%以上の力を引き出すこと、などが挙げられる。
文章でいえば、誤字脱字をチェックする「校正」、主題や話の流れにまで踏み込んで書き手にする「指示」、出版物によっては原稿にキャッチやリード、注釈まで検討する文字どおりの「編集」、イメージフォトやカラー、ページ割、書籍なら装訂までを考慮する「アートディレクション」。多くの世界でこれらすべてが編集者の仕事だ。
だが、分業が進んでいるのも現実で、出版社や編集プロダクションでは社内で各作業ごとに担当者が異なるし、また代理店主導で進む制作なら、校正はA社、割り付けはB社、デザインフィニッシュはC社と作業が振り分けられる。この際、ABC各社間でのやりとりはない。
分業化の弊害があるとしたら、各担当者が「自分の仕事を終えること」しか考えていないことだろう。「次工程」が視野に入っていればいいほうで、たいてい、「とりあえず済ませて自分の手から離す」ことしか頭にない。

そこに読者は不在だ。
自分の仕事を終え、手から離れて次工程へ原稿を移す。その原稿はずっとずっと先で読者の目に触れるのに、作業者の頭にそのことは、ない。悲劇的なくらいに、ない。

おさかさんは問いかけた。

>「どーせこんな文章誰も真面目に読んでねーよ」って感じなんでしょうか。

違うのである。
「誰も真面目に読んでないだろうな」と読者に思いを馳せる編集者はまだきっと見込みがある。その時点で自分の仕事の不備を自覚していると言えるからだ。
しかし、昨今のひどい印刷物の氾濫はそんな程度をはるかに超えているのである。

実は、書いた本人、目を通した人間、誰もが「よく書けてるじゃん」と思ってしまうのである。筆者は字数制限を期限を守れたら「書けた!」と勝手に達成感を持つ。チェックし検討する者はそれら条件を満たしていることのみ確認したら「オッケー!」を出してしまう。そこに読み手の目が意識されることはけっしてない。

上手に文章を書き、よりよく仕上げるために編集するにはそれなりの技術、技能を必要とする。それには当然優劣がある。劣勢にあれば向上しようと努力するしかない。
しかし、みんな、「自分が劣勢にいる」と気づいているか?
今、誰もが「自分は人より優位にいる」と勘違いしているのだ。
結果、ろくでもないものが幅を利かし、出版界を謳歌している。

それはけっきょく、各作業者が、自分の利益しか考えていないから、そうなるのだ。ライターは原稿料欲しさに書く。これを上げれば○万円。その原稿が条件を満たし、ネタにした取材相手さえ納得する内容であればそれでいい、そうであればよい原稿だと思っている。この時点で、このライターに読者の存在は頭にない。「真面目に読むやつなんかいないだろう」とすら、思っていない。ほんのわずかでも読み手の気持ちになれば、まっさらな真っ白な目で読み直せば、おかしなところや辻褄の合わないところ、不親切な表現は目につくはず。
ライターだけでなく、その原稿を各工程で扱うすべての作業者が同じ調子だ。

傲慢な作家は、締切締切とうるさい雑誌社をとりあえず黙らせて原稿料だけはもらいたいからとりあえず書く。編集者は「こんなもの書きやがって」と思っても(もしかしたらそう思う能力もないかもしれないけど)その原稿を受け取らないと自分の首が危ないからそのまま通す。そこに読者の存在は、ない。決定的に、ない。

読者本位にならないから、ひどい文章がまかり通る。読者本位にならないから、文章のひどさに気づかない。出版物は残る。ひどいものを読んだ人々の文化はその程度におしとどまる。
この文章を子々孫々に胸をはって伝えられるのか、と自問している人がどれほどいるだろうか。この文章を次世代に読ませて平気か。次世代がこの文章から何かを感じ何かを学ぶのだと思ったらもう少し真摯な気持ちにならないか。

津波のように出版物が吐き出されては断裁されて消えてゆく。
消えていくからそれでいいのか?
断裁も、連鎖となれば人々の心を揺さぶり記憶に残り知識を蓄積する一助となる。その一方、誤字誤用の蓄積も助長する。
そう考えたら、たとえ明日は故紙回収行きになるチラシでも、真剣に作ろうと思いたい。
自戒を込めて。

……なんか、わっかりにくぅー……ゴメンナサイ。
midiはコピーライターとしても編集者としても半人前でございます。

コメント

_ ろくこ ― 2007/04/17 07:57:10

最近世の中の流れが速すぎる
これも関係ないでしょうか?
ひと呼吸置くということがないですよね
昔ならメールなんてなくて届くのに二日はかかったし
言い訳ができたし、考える時間があったけど
今はすぐになんでも処理しないといけない

_ ちょーこ ― 2007/04/17 08:02:09

そうですね。急かされますね、なんでも。発注今朝で入稿夕方とかね。文字どおり競争なんですね。何はさておき早い者勝ち。

_ おさか ― 2007/04/17 09:30:41

おはようございますー♪
わかりにくいなんてとんでもない、よおくわかりましたー。
私以前は印刷業界にいたので、こういうニュアンスは理解できます。
印刷する人は内容なんて考えてませんからね(笑)基本的にはお客様(出版社または一般企業)の言うがまま、って感じ。

面白いのは、編集者からの指示が、例えば食べ物だったら「おいしそうに」とかだけだったりするんだって。結局は個々の技術者の腕しだいというか、心持ちしだいってところです。
印刷の営業さんも、成績のいい人は色からレイアウトから文章から、全部きっちり校正してましたよ。「間違ってたり変だったら自分のせいになる」・・・印刷は最後の工程だから、一応「世の中に出る」という意識は少なくとも「おいしそうに」としか書かないような編集者よりは、ありましたね。
そして「やる気があって仕事に対する意識も高くて、技術もある」ような人にどんどん仕事が集まり、どんどん忙しくなってしまい、「やってらんねえ」と独立しちゃうのでした・・・・印刷業界ものがたり。ってどこの業界でも同じ図式はあるのかも。ねっぎんなんさん、とふってみる。

_ 儚い預言者 ― 2007/04/17 09:51:09

 流れる時間の夢見る人の、見つめる意識の宇宙の大きさ。
 誰もが泳いでいるのに、溺れているように見えるのは私だけでしょうか。
 もともと人間は状況の主(あるじ)であって、下僕ではないのに、この世の状況は、魂のゴミ箱行きの様相です。
 感じることの難しさは、感じさせる豊かさがないといけない気がします。
 マイノリティーであることの悲しさは、マジョリティーの押し付けでなく、独自なかつ普遍な喜びの姿の映し見でしょうか。

 すみません、故紙回収は古紙回収ではないのですね。

_ midi ― 2007/04/17 11:18:02

おさかさん
ありがとー。印刷屋さんもいろいろですからね、確かに。安心して任せられるところとそうでないところの違いは「営業担当が人の話を聞く耳持ってるかどうか」ですね、経験から。職人魂を持った印刷業界人の鑑、みたいな人からそれこそ「カス」まで、多くの方々をお仕事させていただいております。皆様、お世話になりまして毎度ありがとうございます。

>ねっぎんなんさん、とふってみる。

ぎんなんさーん(^0^)/


預言者さま
うーむ含蓄に富むお言葉、何度も咀嚼して思考回路を右往左往してみます。
故紙と古紙ですけど、こんなのありました。
http://homepage2.nifty.com/t-nakajima/18toppage.htm

私、何も気にせず故紙と使っていました。ああもう。

_ mukamuka72002 ― 2007/04/17 14:58:37

>ねっぎんなんさん、と太ってみる。
おさかさんもちょーこさんも失礼ですね。

やっぱり死にたくない……あ、この話題は終わったんですね。
いやー、勉強になりましたとです。熱いですね、ちょーこさん情熱に溢れているんですよ、僕なんか毎日嘘ばっかりついて、目の前の仕事をどれだけ手を抜いて楽チンにできるかを考えることに情熱を注いでますからね、初心にもどらないと。

_ ぎんなん ― 2007/04/17 15:17:37

へっ? 呼びました??

「やってらんねぇ」ですか? もちろんあります。独立なんて大層な物でもなく、プログラマーはフリーになったり一人会社を作ってやっていたりする人多いですもの。今のうちの社長は、私が以前勤めていた会社の上司だったお人だったり。

しかし、「おいしそうに」だけ指定した編集者は、出来上がって来た物を見て「イメージと違う」とかクレームを付けたりするんでしょうか?
ソフトウェア、特にクライアント用に一からプログラムを開発する場合、請け負った方は例えクライアントの要求が「おいしそうに」だけでも、それだけで作り出すわけにはいきません。「おいしそう」というのは具体的にどういう事なのか、何を望んでいるのか、ぜーーんぶ聞き出さないと、なにしろソフトウェアは高い買物だから簡単に「やりなおーし!」って訳にはいかない。そこの所なぁなぁで作り出してしまうと、結果クライアントのイメージとは違う物が出来上がる。業務に合わない、使い勝手が悪い、却って不便、そうなるとクライアントも不幸だし、開発した方も(仕様変更で結局人件費が予算をはみ出しちゃったりして)不幸。誰も幸せにならない。
今はもう大抵の会社に何らかのシステムが入っているけれど、昔はコンピュータ=魔法の箱感覚の経営者もいただろうし、いろいろあっただろうなぁ……。
要するにヒアリング能力ですね、これも。クライアントの曖昧な要求を、いかに引き出して具体的な物にまとめるか。

ただ、末端で限られた部分のプログラムなんかしていると、近視眼的になってクライアントはおろかシステム全体も見通せなくなる事はよくあって、なので個人的にはこれを読んでちょっと反省していたりします。忙しい時には特に。やはり、忙しすぎるのかもしれませんねぇ。
えーと、関係ない話を延々とくっちゃべってしまったような気が(^_^;; 失礼しましたー。ぴゅー。

_ midi ― 2007/04/17 16:29:10

mukaさん
>目の前の仕事をどれだけ手を抜いて楽チンにできるかを考えることに情熱を注いでますからね

あたしもおんなじでーす♪

ぎんなんさん
>出来上がって来た物を見て「イメージと違う」とかクレームを付けたりするんでしょうか?

します(断言)。

>クライアントの曖昧な要求を、いかに引き出して具体的な物にまとめるか。

同感。骨が折れることですが、これに尽きますね。ただし、クライアント自身が明快なイメージを持っていてくれたらの話ですが。

_ おさか ― 2007/04/17 16:59:29

>出来上がって来た物を見て「イメージと違う」
あるあるある。
印刷の営業さんは、訳のわからんむっちゃ主観的なクレームをつけてくる顧客と、「これのどこがダメなんじゃい!どおせっちゅうんや!」という工場の職人おやじに挟まれて、とっても大変なのでありました。

でも、その営業さんたちから、システムの要望を聞く段になると、
「とにかく、便利にして。楽に、わかりやすく。じゃ、俺は外出だから」
ということになってしまい、結局同じなのでした。ちゃんちゃん。

_ ぎんなん ― 2007/04/17 18:06:36

やっぱりクレームあるのか。あるよねー。

> ただし、クライアント自身が明快なイメージを持っていてくれたらの話
イメージが無ければ作るっ! 似たようなソフトを見せたり、プロトタイプを作って見せたり。こうやってちゃんとクライアントの同意を取っておかないと、出来上がった時に何を持っていっても「イメージと違ーう!」と言われる可能性がある。(ま、要するにそうなっちゃった時にくらう損が半端じゃない(^_^;;)

> とにかく、便利にして。楽に、わかりやすく
そうそう。その段階から、首に縄つけてアポとって「これでいいか?いいんだな?後で文句言うなよ!」とやるわけです。うは。

_ midi ― 2007/04/18 10:13:38

>イメージが無ければ作るっ!

そうそう、いろいろ見せて暗示にかける。あなたが作りたいものはこれですねーこれですねーこれだあああーーー!ってね。

>後で文句言うなよ!」とやる

けど、必ず文句言う。あいつらただじゃおかん。あたしの目の黒いうちに必ず壊滅させてやる。

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