柚子の香りに包まれて ― 2007/11/12 20:03:42

「柚子の里」として知られるある集落へ柚子狩りに出かけた。電車を降りると自治体のバスが迎えに来てくれていて、それに乗り込み山中のくねくね曲がる舗装道路を約10分ほど走る。やがて車窓の向こうに黄色い実をたわわにつけた木がやたらと見え始める。乗客の一人が「柚子だ」といった。やがて、眼前に広がるのはただ鈴なりの柚子だらけ、という状態になリ、私たちはバスを降りた。
柚子は、斜面にこしらえた段々畑に植えられたものばかりではなく、そこかしこに自生もしている。古来柚子栽培が盛んな場所であったらしい。
柚子は太く長く鋭い棘をもつ。柚子の収穫には、したがって分厚い皮の手袋が必要だ。私たちはめいめい皮手袋と鋏をあてがわれ、高い梯子を上って(柚子の木は高いのだ)、時に上着を棘に引っ掛けてわーとかきゃーとかいいながら、ぱちんぱちんと柚子の実を狩っていく。高いところで両手を離して作業をするため、かなり緊張する。いつも使わない筋肉を使うせいか、梯子を降りたとたん、なんだかどっと疲れた。
この里はもはや臨界集落らしい。案内くださる方々は、壮年期の頼もしいおじさん、おにいさん方だが、彼らをして残り少ない「若手」であると聞いた。臨界集落とは、この先十年、二十年と待たぬうちに住む人のなくなることが予想される過疎地域のことである。こんなに豊かに柚子のなる村が、と私たちは言葉を失うが、おじさんたちは気丈に「臨界集落返上作戦」敢行ですわ、と笑う。
集落には小さな社(やしろ)や旧い遺跡もあると聞き、いい気分で柚子の下を散策に歩いていたら、湿った苔に足をとられて滑り、あ、と思った瞬間見事に捻った。抱えていたカメラをかばって膝や手を下手につき、右足の捻挫、右手指の突き指、左手指と左膝をひどく擦りむいて、柚子の棘に引っ掛けてもいないのにジーパンを破いてしまった。
ひいひい言いながら、お土産の柚子を抱えどうにかこうにか帰宅、その日の夕食にさっそく柚子ドレッシング等々をいただいたまではよかったが、夜半から翌日にかけて痛みがぐんぐん増した。さらに翌々日。つまり今日だが、痛みは増すばかりである。おまけに柚子を狩った両の二の腕が強烈な筋肉痛。とほほ。
というわけで、すべてにおいて効率ダウンしているためしばらくブログをお休みします。