おびただしい兵隊がおびただしい市民を殺し続けた2018/06/21 23:01:55


『証言 沖縄戦の日本兵 ——六〇年の沈黙を超えて』
國森康弘著
岩波書店(2008年)


10年前の本だけれど、どなたであれ一読をおすすめする。
というか、日本人全員が読むべき本である。
これが刊行された当時も、その前も、そして今も、「本土」による沖縄蔑視は相変わらずである。今なお沖縄が抱える諸問題を、自分の国のこととして、自身の問題として捉えて考える人は悲しいほど少ない。文字どおり彼らの問題は対岸の火事であり、どこまでも他人事(ひとごと)なのである。
わたしたちヤマトンチューにとって沖縄は恰好のリゾート地であり、美しい海と珊瑚礁が迎えてくれる非日常の舞台であり、琉球という「異文化」に触れることのできる安上がりな旅先である。わたし自身、ハワイやグアムなんぞに行くぐらいなら沖縄のほうが何万倍もいいと思う。そう思いながらまだ沖縄本島には行ったことがないけれど。
宮古島には幼かった娘を連れて二度行った。子どもを喜ばせるというよりも自分自身の骨休めの意味合いの強い旅だったので、観光よりただ海辺で寝そべっていた時間のほうが長かった気がする。二回めは娘がもう小学生になっていたので、夏休みの宿題のネタにできそうなことはひととおりしたかな。グラスボートに乗って海の生き物を覗いたり、シュノーケリング体験をした。
このようにヤマトンチューは沖縄をリゾート地として消費している。もちろん、ここで悲惨な戦闘があり、無策で無能な日本軍のせいで死ななくてもいい多くの地元住民の命が失われたことは、史実としてみな知っている。しかし、現代のわたしたちはそれをまるで知らないかのように振る舞って沖縄で幸せなひとときを過ごすことが善であるように勘違いをしている。
沖縄を観光で訪れ、お金を落とすことは重要だ。もっとどんどんやるべきだ。だがわたしたちは琉球王国を日本に併合し、次には米国に差し出し基地の掃き溜めにしたヤマトの人間であるという自覚をつねにもっていなければならないと思う。敗戦の事実はいずれ単なる史実として歴史書に記載されるだけであるが、その敗戦に至る長い時間のなかで、おびただしい兵隊がおびただしい市民を殺し続けた。わたしたちはその兵隊たちの子孫なのだ。
第二次大戦は、人間が面と向かって人間を殺した戦争だった。
本書で著者は、多くの証人に重い口を開かせ、経験談を引き出している。ひとりひとりがその手で殺した人間の命に思いを馳せ、体験を語っている。著者の筆致は、淡々としている。そのことがいっそう、事実を重く突きつける。

読むのは辛いが、本書はコンパクトにまとめられており、重いテーマのわりにはすっすっと読み進むことができる。これがすべてではないし、ほんらいもっと多くの証言や証拠を掘り起こし記録して、映像化などによって広く周知するべきである。「日本人の必須基礎知識」のひとつである。

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