古都でコトコト言の葉がさね ― 2007/05/22 18:43:19
5月19日土曜日、関西オフが再び開かれた。詳しくは塾長の爆笑道中記をごらんいただくとして、私のほうではお目にかかったみなさんについて印象を述べたい。
出席者は:
木の目さん(from 北海道)
でんちさん(from 東京)
ぎんなんさん&なっちゃん(from 福岡)
くれびさん(from 大阪)
マロさん(from 生駒、つまり奈良)
mukamuka72002さん(from 上六だったっけ? とにかく大阪)
鹿王院知子さん(from 鹿王院、というより太秦? 車折? とにかくジモッピー)
それから:
わたくし&さなぎ(←あおむし、でもいいけど)
(from 二条城、というのは嘘だけど近いよ。とにかくジモッピー)
木の目さん、でんちさん、ぎんなんさん&なっちゃん、くれびさんには、この日初めてお目にかかった。
私とさなぎは自転車を無難な場所に駐輪するのに多少時間を要し、少し遅刻して到着。通りから、それらしき人びとの横顔や後頭部が格子窓の向こうにうかがえる。きっとあの席だ。
その個室に案内され、一歩足を踏み入れると、そこにはずらり、ひと目でその人とわかる(笑)顔ぶれが。
私は前回同様半ばボーっとしたまま、ろくに挨拶もしなかった。皆さん大変失礼しました。そしてさなぎとともに空いていた椅子にすすすっと座った。私の右にはパッチリおめめのライオンハートmukaさん。その向かいに毛虫の怖いイケメン探偵マロさん。
その隣にでんちさん(つまり私の向かい)。
その隣にくれびさん(つまりさなぎの向かい)。
その隣に木の目さん。
その隣にろくこさん。
その向かいにぎんなんさん。
その隣になっちゃん(つまり木の目さんの向かいでさなぎの隣)。
「お母さん、お母さん」
「何?」
「みんなおっちゃん? おにいさん?」
「君にはおっちゃん。お母さんにはおっちゃんだったりおにいさんだったり」
「お母さん、お母さん」
「何?」
「みんな、作文上手?」
「上手やで」
「誰がいちばん上手?」
「うーん……(答えに窮している)」
「お母さん、お母さん」
「何?」
「背広のおっちゃん、学校の先生やったら、いやかも」
「×××(声を立てずにうつむいて苦笑)」
以上、会食の席ではしたなくもさなぎと私が交わした内緒話の抜粋である。
帰路。
さなぎは両手の指をそろえて顔の横に添え、指先が少しだけ天をつくような仕草をし、
「髪の毛がこんなんやった人」
「ああ、でんちさん」(でんちさん、ごめん)
「最初見たより優しい感じやった」
「うん、優しいよ。うふふふふ、とか、ごろごろ、とかそんなん書かはる人やねん」
でんちさんは、何がしかの伝統工芸とか大工とか、そういう分野の若手職人さん風の、とても渋い容貌の方だった。この方が、どのような表情でパソコンに「うふふふふ」とお書きになるのか、私は想像しては笑いをこらえていたのである(でんちさん、ごめん)。物静かで、あまりお喋りされなかったけど、短い受け答えには、ふだんから相対する人に対して謙虚に振舞い思いやりをもって接しておられる姿勢がにじみ出ている。それはそうだ。そういう真摯な人でなくてはとてもとてもこんなコミュニティーの面倒は見られないだろう。でんちさんがそのようなお人柄でいらしたことに、ただただ感謝である。
「前に座ってた猫のおっちゃん」
「ああ、くれびさん」
「すごい、ええ感じ」
「そやろ、そうそう」
くれびさんは、たとえばどこかのNPO主催の「親子でクリスマスリースを作ろう」とか「牛乳パックで汽車ぽっぽを作ろう」なんてイベントに行ったら必ずいる優しくて面倒見がよくて適切なアドバイスをくれるおじさん(というのは申し訳ないほど若々しい)、という印象だった。当日はボーダーの長袖Tがお洒落だったけれど、スーツを着たらバリバリエリートビジネスマン、きものを着たら室町の若旦那、エプロンつけたらクッキングパパと何でもお似合いになりそうだった。可愛い飼い猫たちの写真をさなぎに見せてくださったが、猫を語るときのくれびさんの表情の柔和さに、あの血飛沫がどばーっと迫る、それでいてお洒落な愛憎劇なんぞを、本当に書く人なのかどうか、一瞬疑心暗鬼に陥った。くれびさんの文章を読むのはもう少し大人になってからね、さなぎ。
「なっちゃん、お母さん(ぎんなんさん)とそっくりやー」
「ほんまやなあ、二人とも優しいまあるい顔で」
「なっちゃんとこにはモルモットがいんねんて」
「うん、そうらしいなあ」
「ほんでな、あおむしも7匹いるんやって」
「えええ、そうなんや。草食べんのばっかりやな」
「そやしウチもイモリ飼おうさあー」
「なんでやねん」
とてもシャイなぎんなんさん&なっちゃん母娘。機関銃のように喋る私やすぐ横から口出しするさなぎをさぞかし節操のないことと呆れて見てらしたのではないかしら。お目にかかったらあれも話そう、これも話そう、と思い描いていたけれど、全部は叶わなかった。ぎんなんさんの、切れ味のいい文章やツボを突くコメント、時にはカウンセラーも務まるほどの思いやり。つぶらな瞳の奥に、その人生の喜怒哀楽から得た信念のようなものを見る気がして、私は心の中で感動していた。なっちゃん、母さんについて行きな。
ぎんなんさんは私がリクエストした「スパム」の写真をポストカードにして持ってきてくださった。さなぎは「きのこファミリー」をいただいた。とても嬉しい。この次はぜひ、3人でおいでやす。
「北海道のおっちゃん、イメージとちごた」
「どんなふうにイメージしてたん?」
「あんなあ……えーと……。やめとくわ、やっぱり」
「なんやねん」
木の目さんは、逆さにしても実直なサラリーマンだった。スーツにネクタイといういでたちでらしたのでよけいにそう感じたかもしれないけど、お話し振りを見ていて、昔勤めた会社の人事部にこんな人いたっけ、なんて思ったりした。普通にサラリーマンをやってたら平穏な日々だっただろうに、こんなことに足を突っ込んでしまって、だけど突っ込んだからにはどこまでも夢を追いたい、追えば実現するような気がするんだと、その普通の実直なサラリーマンの風貌からは想像できないほどの熱い思いを吐露しておられた。若い頃にアルバイトで訪ねた作家の話なども楽しくて、オンラインでのやり取りだけではわからなかった木の目さんの、書くことへの情熱が、食卓にほとばしっていた。ほんの少し、圧倒されそうになっていたのである。
またしても夢のひとときを、またしても地元で味わわせていただけて、このような幸福があるだろうか。
「また、集まる?」
「何か月か先になると思うけど」
「今度は遠いところで集まるの?」
「わからへん」
「いっしょに行きたいなー」
「来んでええよ」
「ほな、ここで集まってもろてよー」
「あのなあ」
皆さん、本当におつかれさまでした。
ちなみに文中のさなぎとはウチの娘のことです。