「させていただきます」っていうなー!!!2010/10/01 20:06:36

この土日も仕事することになったから、もう今夜は帰ることにした。
ここ何か月も何か月も言いたいのを我慢してきたことがあったけどもう我慢できないから、言う(書く)。

あ、いや、そもそもなんで我慢してたかというと、本来私のブログは本読みブログだからさ、できるだけ読書の話をしたいとつねづね思っているわけよ。でも、来てくださってるみなさんは当然ながらご存じだけど、仕事は倍増で寝る間もないほど忙しいわ、寄る年波でどうやら更年期で体しんどいしんどいわ、けたたましいくらいの暑さで金魚がごんごん死んでいくわ、なのに呼んでもいないのに蜂が来るわ、娘は受験生だわ、なのにぜんぜん勉強しよらへんわ、なのにいっちょまえに各高校の進学説明会にだけは参加して人を巻き込んでくれるわ……と、それでも本だけは読んではいるけどその思ったところを書き留める時間がないのである(あ、おさかさん、新潮文庫の『ムッシュ・クラタ』はさ、表題作より所収の『晴着』『へんねし』がおすすめよっ。小説ってこーゆーもんよ。読んで読んで! 速攻で読めるし)。

A《先日お話しさせていただいておりました、以下書類をお送りさせていただきますので》
B《このたびは貴重な資料をありがとうございました。喜んでご活用させていただきます。》
C《私どもで作らせていただいておりますこの●●をこれからご紹介させていただきますがその前に少し簡単にご説明させていただきますと》
D《いまこの●●地区の企業様にご案内させていただいてるんですが、従来の電話回線の■■はXXXXとなりますので私どものほうで工事をさせていただきますとたいへんお得な料金を適用させていただけますのでお電話させていただきました。》

A君、そんなにへりくだらなくていいよ。
B君、活用するのは誰なの?
ABは文書である。
C君、その前置きでもう君の話は聞く気しなくなっちゃうよ。
D君、だから電話営業失敗すんだよ。
Cは訪問客、Dは電話営業。

日々、だいたいこのABCDのタイプがローテーションで私の回りをうろちょろする。非常に目障りで耳障りである。

2年くらい前、クライアント先のあまり賢くない担当女子社員に手を焼いていたのだが、当時は「千円からお預かりします」のコンビニ語や「こちら~になります」のファミレス語が一世を風靡しており、はたしてその困ったちゃん女子社員もFAXの送り状がいつもこうなんである。

《○○様
 お世話になっております。
 こちら、A案件の資料になります。》

私は彼女からのFAXが来るたび「いらっしゃいませこんにちはー」と迎えたものだが、この担当者は号泣しても許される(私がよ)くらいに仕事ができない困ったちゃんだったので、問題は別のところにエベレスト山をなしていたので、そんななかで、会話や文書のはしばしにコンビニ語が出るくらいのことなど、どうってことはなかったのである。思えば穏やかな時代であった。

娘が中三に進級する少し前、修学旅行説明会があった。この話、ちょっと書いたと思うけど、説明会における教員たちの言葉遣いがあまりにも耳障りで気絶しそうになったのであった。

《お子さまがたが持ってこられたお荷物はここで一旦預からせていただき、市内観光へとご案内させていただきます》
《この日のお子さまがたは船で島へ移動されまして、つきましたら、そこでは島のホストファミリーが出迎えさせていただいて、お子さまを車でお送りさせていただくことになっております》

あのさー。あんたは誰?
ここは中学校で、あんたたちは教師で、あたしたちはあんたたちに教わっている生徒の保護者なの。
あんたたちはバスツアーの添乗員?
あたしたちはツアー客?
なんなのよお子さまって。なんなのよその、させさせいたいた連発の言葉遣いは。

上のは、エエ歳こいた英語教師(女性)である。英語の授業はなかなかよいと思うのだが、どこかで何かを間違っておられるようである。

陸上部顧問のカン爺先生(体育科)は「えー生徒たちはですね、毎年これ、議論になるんですが必ず○○とか■■とかもって行きたがりますけれども、われわれも強く禁止事項であることを伝えますが、ご家庭でもしっかりお話しくださってですね、要らんものを荷物の中に紛れ込ませることのないように、よろしくお願いいたします」と非常に一般的平均的学校的日本語で引っ掛かるところがないのである。

別に私たちは高みから先生がたを見下すつもりは(あるやつもいるだろうけど)まるでないし、自分の子を学校で「お子さま」待遇してもらいたくもない。びしばし厳しく鍛えてほしいと思っているのだが、この英語教員に限らず、学校現場では子どもには優しく接するのがベストだと思っているようである。暴言を吐く子、暴力を振るう子、気持ちの荒んだ子、しゃべらない子。娘の学校には、よくそれだけ問題児がいるもんだねと呆れるほどなにかをかかえた子どもがいるが、けっこう放置状態である。優しく「声かけ」するだけである。「いけないよ」「そうする前に考えてご覧」「話したくなったらおいで」みたいな。

そんなもんビシーっと言うて聞かんかったらバシーっと叩かなしゃあないやろ。(by嶋先生)

学校現場は小中高いずれも「お子さまに優しい」場所になっているようだ。この7月から9月にかけていくつかの高校の説明会に出かけたが、子どもたちがいきいきと個性を発揮できる場所なんです、というのがわりとどこでも決まり文句のように聞かれた。デキる子はよりデキるように。できない子はそれなりに楽しめるように。
そして、各校皆さん本当におんなじような言葉遣いの司会進行で、眠たくて永眠しそうであった。

E《えーでは、ただいまより本校▲▲コースの進学説明会を始めさせていただきます。》
F《司会進行は本校の放送部部長、2年の○田○子が務めさせていただきます。》
G《まずは本校校長の■川■朗よりご挨拶させていただきます。》

最初のほうに書いたABCDは、20代後半から30代半ばの、私から見れば若手社会人さんたちである。この際はっきり言うが、彼らは学校教育においてきちんと敬語を学習してきてはいないのである。使いかたを知らなければ、とりあえず受身形にして丁寧語にしておけば怪我はないと思うのも無理はない。むやみに責めることのできない事実だ。彼ら自身無意識のままハンデを背負って大きくなっちゃったのである。
いつだったかキムタク主演のドラマで、インテリアデザイナー役のキムタクがコンペシーンでこういった。「ではただいまよりプレゼンを始めさせていただきます」
シナリオライター、おまえもか……。て感じ?
いうまでもないがテレビからガンガン襲ってくる言葉は何年も前からもう腐りきっている。どっぷりそれに浸かって(学校でろくに言葉を学ばずに)育った世代にまともにしゃべれといっても土台無理だろう。

しかし上のEFGやウチの中学校の英語教員は少なく見積もっても40代前半から50代である。教員なのである。教壇に立ってきた人たちなのである。普通の会話、普通の説明文くらいは苦労なく話したり書いたりしてほしいのである。
~させていただきますぅーーという言葉遣いは、モンスターペアレンツへの対処法のひとつとして、教員向けマニュアルに書かれているのではないだろうか。
そう疑われてもしょうがないじゃん?

ちなみに、こう言ったほうが相手の目と耳に心地よく届くであろう表現を書いておく。

A《先日申し上げました以下の書類を郵送いたしますので》
B《このたびは貴重な資料をありがとうございました。大いに活用したく存じます。》
C《私どもが作成しましたこの●●のご紹介にあたり、少し簡単にご説明申し上げますと》
D《●●地区の企業様向けのご案内でございます。従来の電話回線の■■はXXXXとなります。私どもに工事を発注くださいますと、たいへんお得な料金を適用できますので、お電話差し上げた次第です。》
E《えーでは、ただいまより本校専門学科の進学説明会を開始いたします。》
F《司会進行は本校の放送部部長、2年の○田○子が務めます。》
G《まずは本校校長の■川■朗よりご挨拶申し上げます。》

それとウチの英語教師。これ、修学旅行についての話なんだからね。

《生徒たちは荷物をここで一旦預けます。そして教師の引率で市内観光へ向かいます。》
《この日、生徒たちは船で島へ移動します。到着地では島のホストファミリーのみなさんが生徒を出迎えてくださり、車で各家庭へ連れていってくださいます。》

今日の午後、アサイチからかかっていた取材を終えて外出先から帰ったら、デスクにはFAXが数通と、PCにはメールがどひゃっと来ており、どれもこれもどれもこれも、もう、空いた口ふさがらなくて、おまえらコンビニでバイトしてる留学生を見習えーと叫びたくなるのであった。(そう、留学生の日本語がいまいちばん美しいのよ、知ってた?)

言葉遣いは笑わせてくれるが用件自体は苦しめてくれるものばかりで、笑っても叫んでもいられないので休日出勤ゴーゴーなのである。ああ。