Le Havre2012/06/01 22:29:11

機内では観たい映画をセレクトすることができた。ったく、最近の飛行機ってハイテクなのね。
Le Havre という、アキ・カウリスマキ監督の映画があったので迷わず選ぶ。

Le Havre はルアーヴルと読み、フランス北部の港町である。
不法移民がよく流れ着く。この映画もそういう話が下敷きで、それをめぐって交錯する義理人情、というかご近所付き合い、というか。

帰国して新聞の映画欄を見ると『ルアーヴルの靴磨き』という映画が小さな館で上映されているのを知った。あ、これだ。



靴磨き。
たしか、チョコレート工場のチャーリーも靴磨きをしていたっけ。

でも、原題をそのままカタカナにして、『ル・アーヴル』というタイトルでよかったんじゃないだろうか。
たしかに靴磨きだけど、それ、そんなに多くを占めないし。

ルアーヴルは、私がよく馴染んで知っているフランスのどの街にも似ていない。陽光あふれる南の都市ばかり巡っていたから、グレー基調のどんより暗い街並みは他国のようでもある。場所によったらパリの場末のまたその裏という感じもする。しかし、海があるので、パリが持たない切ない開放感がスクリーンに満ちる。

カウリスマキの映画は、たぶん、総合評価でマイベストワンだ。つまり、何を観ても全部オッケー。ベリグー。この人のどの作品よりも好きな他の監督の作品もあるけれど、その、「他の監督」の作品をすべて好きかというとなかなかそんな人はいなかったりする。カウリスマキか、スペインのペドロ・ア……なんていったっけ? こてこての家庭内愛憎劇を描いたらピカイチのシネアスト。その人もハズレがないのでマイベストワンだ。お、ベストワンが二人はいただけないな。

ルアーヴルのくすんだ風景と、ささやかな幸せを分かち合う小さなカルチェの物語が、やたらとココロをぐさぐさ刺してくれて、かの国を後にする私にはあまりにキツイ映画だった。フランスを発つ機内で観るのでなければ、しみじみほのぼのきゅきゅっと感動してすんだだろうに。

チャンスがあったら観てください。凄くいい作品です。