野良猫生まれた2008/04/17 19:26:13

これは去年の写真なんだけどね。


勤務先の建物の中庭で、野良猫が子どもを産んだ。全部で六匹いる。母猫もこの庭で生まれた猫で、その母親もそうだ。毎年何匹も産んで、生まれて、必ず翌年、たった一匹が「里帰り」してまた子を産む。脈々と伝わるDNAのせいか、顔だちがとてもよく似ていて、成長してこの庭を巣立ったあとも、近隣の塀づたいに散歩していたり、貸ガレージを闊歩していたりするのに出くわすと、あ、ここの猫だ、とすぐにわかる。
器量よしの猫ではないが、チビスケだったくせにでっぷり肉付きがよくなって、赤子に授乳させつつまどろんでいる様子を見ると、人も猫も同じだなあと思う。赤ちゃん猫たちはもちろん可愛くて全部持って帰りたい衝動に駆られるが、生き残って暮らしを営む母猫が大変にいとおしいのである。
住宅密集地であるので、野良猫を毛嫌いする住民もいる。私たちはけっして無責任なことはできないので、庭で猫が出ようが鼠が出ようが蜘蛛が巣を張ろうが、餌づけは絶対にせず、ただ粛々と掃除をするのみである。
だから猫たちは誰にも保護されずに、自力でこの住宅密集地で生きていこうとする。人間の中にはとっ捕まえて保健所送りにしようとする者もいる。また、近くに御苑という名の公園があって烏の格好の棲み処になっているのだが、迎賓館に賓客のあるときは烏よけの発砲が行われる。烏たちは一時的に公園を出て街路樹やビルの屋上などに避難するが、そのときたまたま美味しそうな子猫に出くわしたりする。
おととしの夏だったか、烏の群れが勤務先の上空を覆ってカアカアとうるさく、庭では赤子を守る母猫がふぎーふぎーと空に向かって威嚇していた。あのときはまったく仕事にならなかったのである。面白くて。
いまもそうだ。今、子猫たちは折り重なってくうくうと眠っている。可愛らしすぎて、目が離せなくて、仕事にならない。締め切り間近の原稿が山積みだというのに、私は子猫たちのうちのとくに可愛い「三毛模様のあの子」をどうやって持って帰ろうか、持って帰ったらばあちゃんは怒るだろうな、それに飼い猫が二匹になったらあたしの財布はいよいよドエライことになってしまう、うーんどうしよううーんうーんうーん、と思いめぐらすばかりの頭は全然仕事に向かないのである。