給湯器壊れまして ― 2010/01/23 00:20:09
お風呂を新しくしたのは12年前の夏のことだ。前のガス給湯器は25年働いてその天寿を全うしたので取り替えることになった。当時ウチでは両親とも元気で働いていたので、お風呂リニューアル大作戦は彼らが地域のガス店と打ち合わせて進めていた。営業の口車に乗って新しい機能のついたカワックだのサウナだのミストだのって並べ立てられて、全部取り付けましょうね、という勢いで話が進みそうになっていたのを、たまたま見積書を私が見たので待ったをかけた。ちょっと父ちゃん母ちゃん、カワックだのサウナだのミストだのって言葉の意味わかってんの? カワックて乾かしてくれはんにゃろ? サウナって温ったこうしてくれはんにゃろ? ミストって霧が出んにゃろ? ってさ、そんなもん同時に全部あってどうすんのよ、要らんでしょうがっ
と、横から割って入って却下しまくって、見積もりの数字を200万は下げた。
それでも、風呂場一つ直したというだけでも、私の両親にとってはそれまでの積み立て貯金をはたいた大工事だった。すでに私の娘・さなぎが生まれていて、1、2歳の可愛い盛りだった。じいちゃんとばあちゃんは孫のために使い勝手のよいきれいなお風呂にしたかったのである。
工事は滞りなくすんで、パステルカラーの可愛いお風呂になった。ガス店はきちんと定期点検に来る。順調に滑り出したのだが……。当時はまだ「エコキュート」はじめ「エコ○○」といった商品はなく、エコ意識、節約意識の高まりはいまほどではなかった。したがって、ニュー給湯器は我が家の光熱費の高騰を招いてしまったのである。けっして無駄遣いはしていないけど、便利なのでつい、というヤツだ。
さらに、たいへん簡素になったにもかかわらず、前のお風呂とあまりに使い勝手が違うために、リモコン操作などをマスターできない両親、とくに父は誤操作を繰り返し、覚えないまま惚けちゃって、ついに覚えないままあの世へ旅立ってしまった。
母親も、リモコンでの温度調節や水量調節ができない、というより覚える気まったくなし。エラー表示が出たら取説くらい見なさいよっつーの。給湯器に限らず、水道高熱関係、家電関係でトラブると、立ち往生してしまってあたふたするばかりである。彼女ができるのは蛍光灯が切れたときそれと同じものを電気屋で買い求めるくらいのことである。(取り付けるのはもちろん私)
加えて、給湯器をつけてくれた地域のガス店のメンテナンスが甘く、定期点検の直後に故障とか部品交換とかしょっちゅうある。アンタらはこないだ半日ウチの給湯器いじくり回して何をしとったんじゃっ みたいな。
年に一度の定期点検は(なぜか)2月だ。なぜそういうローテーションなんだろ?取り付け工事は夏だったのに。でもそんなわけで、2月になるとたいへん愛想のよいメンテ係がやってきて、いろいろ見たのちハイ異常なしですよーきれいにお使いですねーなんていい残して去るのだがその直後に壊れるのである。昨年もそれでひと騒動あったのである。
今年も、2月のメンテの案内が来た。去年の騒動もおととしの故障もまだ記憶に新しい。もう点検なんか来るなっていってやろうか、なんて冗談めかして話していたら、点検に先立って今夜壊れました(笑)
もうすでに夜遅いので、大阪ガスのセンターにフリーダイヤルで状況を訴える。すると、当直係が巡回しているのでそちらへ向かわせるという。その当直さんとは、我が家の係のガス店ではない。我が家の係のガス店に手配すると翌日午後の訪問になるというので、「困ります。早く来てもらえるほうでお願い」と頼んだ。
センターとの電話を切った2時間後くらいに当直ガス兄さんは電話してきて、「スンマセーン。あと1軒回った後にお宅へ伺うんで12時まわるかもなんですけどー」
構わないから来てください、といって電話を切ると二度めの電話が11時半にかかってきて、「もうすぐ到着しまーす」
思いのほか早く来てくれた兄さんは、てきぱきと作業を始め、15分後に診断を下した。「あれとこれとこれの三つの部品の交換をするんですけど、けっこう古くなってる箇所なんで機械の奥まで触りますので2時間、下手したら2時間半くらいかかるんですが」「え、いま修理してくれるの?」「はい、幸い部品もってきてますし」「いまから2時間だと午前2時頃になるってことでしょ」「はい」「ウチの後にあと2軒まわるっていうたはったよね、さっき」「はい」
「だいじょうぶなん?」
と余計な心配をする私。
「いや、僕は全然。でもお宅にご迷惑じゃないかと」
とんでもない。直るんならぜひお願いします。
兄さんは寒いところで(給湯器は外にあるからね)黙々と作業を続け、私は室内のホットカーペットの上で手袋を編む。
午前0時45分。
「スンマセーン。いっかいお湯出してもらえますー?」
テストすること2、3度。ごぼごぼズコズコいいながら飛び出した水が温かいお湯になっていく。指先が、ほっとする。
「直ったってことですか?」
「はい」
「作業終わったってこと?」
「ですね。けっこう早かったですか」
「予告の半分ですよ」
「お。ほんまですね。実はこちらに来る1軒前のお宅で2時間かかっちゃったもんですから、長めにゆうたんですけど、へへ」
首尾よく済んで嬉しそうな兄さんは、代金を受け取ると礼儀正しく挨拶をして、さっそうと次の訪問先へ、真夜中の空の下走り去ったのであった。
……とここまで書いて、寝ようかなどしよかな、と迷っている。だってあと3時間もしないうちに起きなきゃいけないし(早朝出る娘のお弁当つくらないといけないの)。仕事しようかなー(土曜日も出勤なの)。