子どもが携帯電話を持つことで起こる本当の弊害 ― 2010/03/12 10:31:23
親が多忙なため、十分に面倒を見てやれていないのですが、幸い娘は小学校のときから「学校大好きっ子」で、まさしく学校に心身を育てていただいております。
ほんとうにありがとうございます。
つい先ほども、持久走大会から帰宅して、明るい弾んだ声で自身の、また友達の健闘結果を報告してくれました。こうして何にでも全力投球できるのも、先生方の強い後押しがあってこそだと日々痛感しています。
中学校生活も折り返しを過ぎましたが、無事に卒業する日まで、なにとぞよろしくお願い申し上げます。
先日、アンケートが配布されました。その最後に、携帯電話に関する設問がありました。
相変わらず、「家庭内で携帯使用のルールを設けているか」「使い方を話し合っているか」といった設問が並んでいました。
先生方は、携帯電話の弊害は悪質なサイトや勧誘メールの存在にあるとだけ、お考えでしょうか?
知らないうちに通信料が膨大になっていたり、気づかぬまま利用料が発生していて後日法外な請求をされるかも、といった金銭的トラブル発生が懸念される、ということだけが問題だとお考えですか?
こうしたツールの発達でコミュニケーションの形と質も変容しており、そのことへの対処方法にも苦慮されていることと存じます。
生徒とのコミュニケーションをうまくとれない先生方がいらっしゃるのも、ある意味無理からぬことでしょう。
ではなぜ、コミニュケーションの形と質が変容してしまうのでしょう。たかが携帯電話の普及くらいで。
携帯電話を使用することの最大の弊害は「他人の家庭へ電話をかけなくなった」「家に電話がかからなくなり、応答することが少なくなった」ことだと思うのです。
私は普通の会社勤務ですので、普段から取引先と電話で話しますが、先方の若い社員さんなどに、どうも「電話で話ができない」人が急増しているのです。「○○社の●●と申します」「▲▲さんはご在席ですか」など、基本的な話法がまるでできない人が、信じられないけど多いんです。「あのーすみません、えっとー▲▲さんお願いします、あ、あたし●●ですけど、○○社の」というふうに、述べる事柄の順番が逆だったり、敬語を使えなかったりというケースはごく普通にあります。
大きな企業では一通りの新人研修がなされているようで、そういう会社との電話では非常にマニュアルじみた応答がなされます。それは完璧ですが、ちょっとイレギュラーな会話をするととたんに電話の向こうで「え」とか「あ」とか声を発したあと「沈黙」されます。どう返答していいかわからないのでしょう。機転を利かせて「確認しますのでしばらくお待ちください」または「折り返しお電話さしあげます」とその場をしのぐことができないのです。
最初のやりとりだけでなく、具体的な交渉や打ち合わせをしていても、会話中に説明ができない、理由や検討事項をこちらに伝える術を知らない人は実に多いのです。「んーと、それは、結論は◇◇なので、とにかくそうしてくれればいいんです」とか、「えっとですね、それはですね、えっと、あとでメールします」など。前者の例は「つべこべいうな、こっちの言うことさえ聞いてりゃいいんだ」といっているに等しく、後者の例だと、たいてい後から来たメールの内容は支離滅裂です。
娘には携帯電話を持たせていませんが、娘の友達には持っている子もいますので、その子たちには私の番号とアドレスを与えています。すると、やたらと娘宛の連絡メールが届きます。そのことじたいは構わないのですが、よく考えると、この子たちはこうして携帯を持っている友達には携帯メールでしか連絡しないのです。友達の家に電話し、受話器をとった先方の親きょうだい、あるいはおじいちゃんやおばあちゃんに対して「もしもし、こんにちは。林田中学校の○○です」と名乗ったり、「■■ちゃん、いらっしゃいますか」と尋ねたり、不在であれば「では▽▽▽▽とお伝えくださいますか」と依頼したり、ということをいっさい、下手すると高校・大学でも、就職活動においても(今はエントリーシートなどといってPCサイトから応募できますから)、経験せずに、大人になってしまうのです。
若い優秀な社会人が育たない大きな理由の一つが、そこにあると思います。
頭の回転がよくアイデア豊富な若い方もおられますが、口を開くとまともな日本語が喋れない、などの欠点が顕著であったりするのです(ついでにいうと、報告書などの文書、メールの書きかたも知らない人が多いです)。そんな基本的なことが原因で、優秀な要素をもっているにもかかわらず、上司や顧客に誤解されて社会で挫折せざるをえない、というケースを生んでいるのではないかと思います。
学校に携帯電話は持ってくるな、とはいえても、使うな、とはいえませんよね。
しかし、難しいとは思いますが、何らかの形で啓蒙されるべきではないでしょうか?
中2で実施されている職業体験学習「チャレンジ体験」などで、体験先の職場に電話をかけさせたりするのはたいへんよいことだと思います。要は、そういう経験をもっと積むべきなんですよね。家庭で積めないとしたらどうすればよいのでしょう。
とりあえずは、そうした問題があるという認識を、学校も各家庭も持ってほしいと思います。一度考える機会を、まずは先生方において、そして生徒たちと共有の場でもっていただけたらと思いまして、このような書面にいたしました。
ご関心がなければどうぞお見捨てください。
2009年●月●日
2年6組18番 十座海沙凪 母 十座海蝶子
西都林田中学校 教員のみなさまへ