チェチェンニュースからの転載2010/03/25 10:45:05

一昨日配信されたニュースです。ぜひご賛同ください。
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Tue, 23 Mar 2010
チェチェンニュース #332(転送・転載歓迎)
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チェチェンから来た二人の難民が、不認定を通告されました。
最新ニュースを兼ねて、声明文をお送りします。

大阪入管では、医療を求める難民たちのハンガーストライキが起こりました。成田では、強制送還途中のガーナ人が、機内で入管職員ともみあう中で死亡し、東京入管では、収容人数の上限に近い700人もの外国人が収容されています。
この日本で、人権侵害が進んでいます。どうか、関心を持ってください。FAXを使った要請や、カンパにご協力をいただけるとたいへんありがたいです。よろしくお願いします。

■【声明】
チェチェン人難民認定申請者の不認定に関する抗議声明
 呼びかけ:チェチェン連絡会議

法務大臣 千葉景子 殿
東京入国管理局長 殿

私たちは、1994年から今まで続いている、ロシア連邦によるチェチェン共和国に対する軍事侵攻と人権侵害に反対し、平和的解決を求める運動を続けてきた日本の市民です。1991年にロシアからの独立を宣言したチェチェンに対して、ロシアは二度にわたる大規模な軍事侵攻を行い、人口100万人のチェチェンで、20万人以上もの一般市民を殺害してきました。
3月19日、法務省・入国管理局は、チェチェンから脱出し、日本で難民認定のための申請を行った2人のチェチェン人青年に対して、同時に不認定を通知しました。彼らは2年半にも及ぶ長い審査の間、最低限の生活費にも足りない支援費で食いつなぎ、健康も悪化させながら、ひたすら日本政府に難民として認定される日を待っていました。

難民の一人、シャルハン・ガカーエフさんはチェチェンのグローズヌイに生まれ、小学校5年生程度の教育を受けただけで、独立派レジスタンスとしてロシア軍との戦闘に身を投じました。チェチェン各地での戦いを続けたあと、グローズヌイでロシア軍に拘束され、虐待を受けましたが、幸いこの時は3日間で解放されました。この時ロシア治安機関の要注意人物リストに載ってしまったため、名前を変え、ロシア連邦からカザフスタン共和国に出て、さらに遠い国への脱出の可能性を探り、ついに日本にたどり着きました。
もう一人の難民、シャムハン・ウスタルハーノフさんは、同じようにチェチェン独立派の一員として抵抗に加わり、3度にわたってロシア治安機関に逮捕・投獄されたあと、日本に逃げました。難民認定を待つ間に、ウスタルハーノフさんはある百貨店でロシア人が起こした窃盗事件に巻き込まれ、それを「幇助」したとして、逮捕されてしまいました。

本人はこの事件について、最初から「まったく身に覚えのない冤罪」だと、強く否定しています。また、取り調べにあたって、本人の言い分はきちんと通訳されていませんでした。私たちの調べでも、調書にはずさんな通訳ぶりが反映した箇所が見られます。一例を挙げれば、〈「ヒロ」という支援組織から支援を受けている〉という記述がありますが、そのような組織はもともと存在せず、これは彼が支援を受けていた外務省外郭団体の難民事業本部(RHQ)が「広尾」に所在するということを、「ヒロ」という組織があると取り違えたものであり、調書を作成するにあたり、警察・検察当局が初歩的な確認さえしていないのは明らかです。

しかもこの間、RHQとの連絡は、本人からも、またRHQ側からも取ることを許されず、孤立無援を余儀なくされました。こうした、容疑者の権利を無視した裁判の結果、二審まで続けて敗訴し、本人によれば「さらに裁判を続けるなら費用は自己負担だ」と裁判関係者に言われたのを信じてしまい、まったく金を持っていなかったため、やむをえず上告を断念したといいます。これらが人権侵害でなくて、何なのでしょうか。

そしてウスタルハーノフさんは、1年半の実刑を大阪刑務所で受け、入管に移された後、すぐに難民不認定の通知を受けとったのです。難民として、生存するための一縷の望みを日本に求めた2人の若者に対して、政府が行ったのは、このような残酷な仕打ちでした。一方、ガカーエフさんに手渡された、千葉景子法務大臣名での「通知書」には、次のようにあります。

1、あなたは、本国において、チェチェン共和国の独立派メンバーとして活動した旨申し立てていますが、仮にあなたの供述を前提としても、身柄拘束されたものの3日間で釈放され、その後出国するまでの約4年間、本国に滞在していたことなどからすれば、本国政府があなたを難民の地位に関する条約(難民条約)上の迫害対象として関心を寄せていたとは認められません。
2、あなたは、チェチェン人であること及びイスラム教徒であることを理由に迫害を受けるおそれがある旨申し立てていますが、各種関係書類などから、ロシア連邦において、これらの事情のみをもって難民条約上の迫害を受ける状況にあるとは認められません。
その他のあなたの主張等をすべて併せ考慮しても、あなたが難民条約第1条A(2)及び難民の地位に関する議定書第1条2に規定する難民に該当するとは認められません。


私たちはこのような、わずか一枚の書類をもって、チェチェンで起こっている事実を無視し、そこから逃亡してきた人を再び追い返そうとする行為に、強い憤りを覚えます。
通知書は「約4年間、本国に滞在」としていますが、そのほとんどの期間は、ロシアではなく、カザフスタンで過ごしており、「本国」という表現は明白な間違いです。そして、これまでチェチェンでは、事実として、チェチェン人であるという理由だけで人口の二割にも及ぶ人々が殺されてきたのです。また、この通知書は、彼が独立派として戦闘に加わった以上、一般市民以上に危険な立場にいることを、まったく考慮していません。

難民認定のために、ガカーエフさんは長い時間をかけて、苦しかったチェチェンでの戦いや、自分が受けた虐待を見つめ直し、関係者の前ですべてを吐露することに耐えました。その間に肺気腫にかかり、ストレスから鬱病にもなりました。それでも提出された陳述書や、チェチェンで起こっている広範な人権侵害についての提出資料(注1など)も、ここではまったく無視されているのです。
不認定通知にある「各種関係書類」とは、いったい何を指すのでしょうか。日本語で刊行されている多数のチェチェン関連書籍のうち、一冊でも参照されているのか、私たちは強い不信を感じずにはいられません(注2)。
私たちは法務省・入国管理局の決定に抗議するとともに、不認定の具体的な根拠を提示することを求めます。そして何より、彼らを難民条約に則って難民認定し、必要な庇護を行うことを、強く求めます。

チェチェン連絡会議 2010年3月23日

署名者
 青山正(ピースネット・市民平和基金)
 稲垣収(ジャーナリスト・翻訳家)
 岩間優希(ジャーナリズム研究者)
 大富亮(チェチェン連絡会議)
 岡田一男(映像作家・チェチェンの子どもたち日本委員会)
 姜信子(作家)
 中田考(同志社大学教授)
 林克明(ジャーナリスト)
 村山敦子(団体非正規職員、ロシア語通訳・翻訳業)
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声明文についての連絡先:
〒101-0063
東京都千代田区神田淡路町1-21 静和ビル1-A
ピースネット気付 チェチェン連絡会議
clc@chechennews.org

■ファックス要請にご協力をお願いします!
 法務省・入国管理局へのファックス要請シートを作りました。
 下記のURLからPDFファイルをダウンロード&プリントアウトして、
 2ページ目に記入されている番号に送ってください。

http://d.hatena.ne.jp/chechen/files/20100323_fax.pdf


■在日チェチェン難民支援カンパのお願い
在日チェチェン難民への、法律的支援費、生活支援費、その他の活動費として、カンパをお願いします。金額は指定しません。どうぞご協力をお願いします。

郵便振替加入者名:
チェチェン連絡会議 口座番号:00180-6-261048
(「難民支援」とご明記ください)
ゆうちょ銀行 019店 
当座 0261048 チェチェンレンラクカイギ

注1:HRWリリース:
『ロシア:欧州裁判所に従い残虐行為の終焉を 北コーカサスでまん延する、人権活動家の殺害を含めた暴力の脅威』(2009.9)
チェチェンでの人権侵害に対して、欧州人権裁判所では115件に上る判決を下しており、ほぼすべてにおいて、ロシア政府に超法規的処刑、拷問、強制失踪の責任があるだけでなく、それらの犯罪の捜査もしてこなかったとしている。
http://www.hrw.org/ja/news/2009/09/28

注2:関連書籍:
『チェチェン廃墟に生きる戦争孤児たち』
オスネ・セイエルスタッド著/白水社(2009)
『チェチェンやめられない戦争』
アンナ・ポリトコフスカヤ著/NHK出版(2004)
『誓い チェチェンの戦火を生きたひとりの医師の物語』
ハッサン・バイエフ著/アスペクト(2004)
 ――など、チェチェン軍事侵攻と人権侵害の事実を克明に綴った書籍が日本でも多数刊行されている。
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チェチェンニュースからの転載 もう1件2010/03/25 10:55:34

4日前に配信された分です。ズレててすみません。
お近くにお住まいの方、ぜひお運びくださいませ。
来週金曜日のイベントです。
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Sun, 21 Mar 2010
チェチェンニュース #331(転送・転載歓迎)
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■『アンナへの手紙』上映会 in 練馬
 チェチェンとロシアを巡り、静かな感動を呼ぶ映画、『アンナへの手紙』が、練馬区で再び上映されます。チェチェン音楽や、写真のパネル展示なども予定されており、練馬に「小さなチェチェン」が現れるとのことです。ぜひとも、足をお運びください。

日時 2010年4月2日(金)19:00~21:30(くらい?) 開場18:30
会場 大泉学園ゆめりあホール
http://www.neribun.or.jp/oizumi/

参加費 一般1,000円 高校生以下500円
主催  市民の声ねりま
(チケット申し込み、お問い合わせは)
練馬区東大泉5-6-9 池尻成二事務所 03-5933-0108
siminnokoe[at]nifty.com

ドキュメンタリー映画「アンナへの手紙」
2008年 スイス ドキュメンタリー 83分
監督:エリック・バークラウト
作品提供: Refugee Film Festival (難民映画祭)
日本語字幕:日本映像翻訳アカデミー

プーチン大統領が54歳の誕生日を迎えた2006年10月7日、ロシア政府をもっとも厳しく批判し続けたジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤは、モスクワにある自宅のエレベーター内で暗殺された。娘に子どもが生まれることを喜んでいた矢先の悲劇だった。
彼女は、一党独裁に近づくロシアの各地を歩き、格差の広がる地方の人々の声を拾い集めた。そして、世界から見捨てられた、チェチェン共和国への軍事侵攻の実態を暴き、弱者に常に寄り添ってきた。
一人の女性の人生を辿りながら、ロシアの闇に切り込むドキュメンタリー。彼女の死から3年。決して忘れられてはならない人が、ここにいる。

上映後、トークイベント開催!
対談
 寺中 誠(アムネスティインターナショナル日本事務局長)
 大富 亮(チェチェンニュース)

●アンナ・ポリトコフスカヤとは
ロシアのジャーナリスト。1958年生まれ。1980年、国立モスクワ大学ジャーナリズム学科卒業。モスクワの新聞「ノーヴァヤガゼータ」紙評論員。1999年夏以来、チェチェンに通い、戦地に暮らす市民の声を伝えてきた。「ロシアの失われた良心」と評され、その活動に対して国際的な賞が数多く贈られている。2004年、北オセチアの学校占拠事件の際、現地に向かう機上で何者かに毒を盛られ、意識不明の重態に陥った。回復後、取材・執筆活動を再開する。
2006年10月7日、モスクワ市内の自宅アパートで凶弾に倒れた。著書に『チェチェンやめられない戦争』(NHK出版)など。

●チェチェン戦争とは
ロシア南部に位置するチェチェンは、19世紀にロシアが併合した地域で、先住民族のチェチェン人が人口のほとんどを占めている。1991年のソ連邦崩壊の際、チェチェンは独立を宣言したが、1994年、ロシア政府は武力侵攻を開始した。この戦争によって、人口100万人のうち、すでに20万人の民間人が犠牲になったと言われている。

●ロシア社会の状況
1991年にソ連邦が崩壊し、共産党による一党独裁の時代が終わり、ロシア社会は民主化に進むかに見えた。しかし、1994年の第一次チェチェン戦争を経て、軍や連邦保安局(FSB=新KGB)をはじめとする武力省庁が権力を拡大。その象徴が、1999年のプーチン大統領(FSB元長官)の就任と、第二次チェチェン戦争の泥沼だった。

現在、チェチェンでは親ロシア派のカディロフ大統領による傀儡政権が、民間人を誘拐・違法処刑するなど、チェチェン人同士が争い合うように仕向けられ、平和への見通しは立っていない。

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