コーヒーは好きですか ― 2010/06/23 20:54:38
あんた、一日に2リットルくらいコーヒー飲んでるでしょ、と昔、ある人にいわれて初めてホントだぁホントにコーヒーばかり飲んでるよあたし、と気づいた、という経験があり、それ以降コーヒーの飲みかたを少しずつ変えてきた。私は、就寝前にコーヒーを飲んでも睡眠の妨げにはならない。また、朝はやっぱりホットコーヒーよ、というタイプでも、なかった。コーヒーを飲み始めたごく初期(中2くらい)から、夜寝る前にブラックを飲む、これが私のコーヒーの飲みかただった。最初からそんなだったので、眠気覚ましにコーヒーを飲むとか、あるいは夜はコーヒーを飲まないわだって眠れないものとか、そんなふうにいう人の気持ちはわからないまま大人になった。大人になる過程で、朝食は毎朝この喫茶店のモーニングサービスなんだ、なんていう男とつきあったり、ケーキバイキング巡りが好きな女子と仲良くなったり、コジャレた店で最後にデザートとドリンクがつくようなディナーをゴチになったり、というようなことを繰り返すうちに、朝も昼も夜もコーヒーを飲む、みたいな生活になってしまっていた。男や友達や飲む酒や行きつけの店や働く場所が変わっても、コーヒーばかり飲む生活は続いていて、あるとき、一日2リットルなんて指摘をされたのだった。
本当は、それよりずっと前にすごく胃が痛かったことがあって、もしかしてコーヒーの飲みすぎかなあ、と、ちらりと思ったことがあった。当時、仕事がハードで睡眠不足気味で、また世の中は激辛ブームで四六時中辛いものを食べていて、食いもんが辛いと勢い酒量が増える、みたいなよくできたバブリーな話にあまりにも乗っかりすぎて、とうとう顔が吹き出物だらけになり、今すぐ刺激物の摂取をやめなさい!と他部署(美容研究部)の部長から指令が下った(化粧品会社のデザイン室に在籍してたのよ)。それで酒と煙草と激辛食を禁止した。それに加えて会社で開発中の海藻パックとかハーブパックとかなんとか化粧水とかの実験台にされつつ、吹き出物は治まった。でも、コーヒーのことを忘れていた。吹き出物より、胃が痛いほうが日々の生活を営むうえでは、とてもつらかったのだが、禁酒禁煙禁激辛期間中も胃の痛みは消えなかった。吹き出物騒ぎからしばらく経ち、酒も煙草も徐々に解禁したある日、なんかさずっと胃が痛いんだよと男にいうと、ん、じゃあちょっとコーヒー控えろよとこともなげにいうので、コーヒーをやめてみれば、胃の痛いのが治まった。
咽喉元過ぎればなんとかで、吹き出物騒ぎも胃痛も過去のイベントとなってしまったある日、イマイチ体調がすぐれない気がしていたら、どうも肝臓が弱っていることがわかって、またしても禁酒を言い渡された。今度は医者に。世の中はバーボンブームを経過した頃だった。私はビールや安ウイスキーの水割りを浴びるほど飲む、というアルコールライフをやめて、飲みに行けばジンかウォッカかバーボンのロックしか飲まない、というスタイルを貫いている頃だった。カクテルにするとかさ、もうチョイ薄めて飲みなさいよ、とまたしても男に言われたが、そんなのマズイもん、と私は、薄めて何杯も飲むという選択はせずに酒量そのものを減らすようにした。ごくたまにお付き合いで飲んでいた日本酒もいっさい飲まないようにした。効果はてきめんで、私の肝臓は病気にならずにすんだ。この機会と、このあと何年も経って出産を経てから、私の酒量は激減していき、今ではすっかり飲めない人になってしまったが、おかげで肝も腎も元気(だと思う)である。
でも、胃は相変わらず、時としてすごく痛む。一日2リットル飲んでるでしょといわれて、よほど欲しいときにだけ、飛び切り美味しい極上のコーヒーを飲む、というふうに習慣を変えてもみた。でも、そういったコーヒーの質や量と胃の痛みとは直接関係がない。というのが長い長い年月を経てわかったことなのであった。過去にコーヒーをやめて胃痛が治まったのは偶然だったのだろうか。コーヒーを飲まない期間が続いても胃痛はいきなりやってきたりもした。したがって、胃痛はコーヒーのせいではない。
私は今回何を言いたいかというと、胃痛を恐れてコーヒーを飲まないという選択は、今はすべきではないということなのだ。何の話だと思われるであろう。説明する。勤務先にはコーヒー好きが多いので、コーヒー豆屋さんが御用聞きにやってきて注文をとってくれるが、今その発注担当をしている若い社員が、つい多めに(かなり多めに)コーヒー豆を発注してしまった。時折触れているように今勤務先の経営状態は火の車である。なもので、豆屋さんの納品書を見て社長が激怒し「こんなにいっぺんに大量にコーヒー買ってどうするのっ」と、その若者はこっぴどく叱られてしまった。コーヒー豆も食品であるから鮮度が命だ。いくら毎日コーヒー飲むったってウチはカフェじゃないのよ、消費量もしれているでしょ。営業思わしくないからできる範囲で節約もしましょうってこないだもミーティングで話したばかりでしょ。と、いろいろな理由でことあるごとに小言をいわれてこの若者がたいへん気の毒なので早くコーヒーを消費して、あら、あのときまとめ買いしたの、あながち間違いでもなかったのね、というふうに少しは社長に思わせることができたらと、いつにも増してコーヒー消費に励んでいるのである。以上説明終わり。今、やたらコーヒーばかり飲んでいる理由を話してみたくなったので、遠回りしたけど、余計なネタも披露したような気がするけど、ときどき在りし日のドーニャの姿が浮かんで涙ぐみそうになったけど、話し終えることができたようだ。
胃は痛くない。でも胸やけがする(笑)。おつかれさま。