それからどうなった?シリーズ その3。雨漏り ― 2010/08/06 00:10:52
ご心配くださった多方面の皆様、ありがとうございます。
いつ再び漏れてきちゃうかわからないんですが、とりあえず天井は乾いとります、いまのとこ。
……って相変わらず同じ書き出し(笑)
ずっとずっと降り続いた雨がやんで、先日嵐のような夕立があったじゃないですか(突風で私がよろけそうになったやつ。冷蔵庫壊れる前兆ねってゆってたヤツ)。そのときも、もう雨漏りしなかったんです。よかったー。
涼しげな瞳をした少年が私の前に舞い降りた。
あなたは?
僕は、ジェイ。
ジェイ、私に何か?
君の部屋に滴る水を止めにきたのさ。
ジェイ、あなたには無理よ。
君は僕を知らない。
ジェイはしゅっと、私の前から姿を消した……と思ったが、重力に逆らって垂直に跳び上がっただけだった。ジェイは屋根の上にいた。屋根づたいに、物干し場へ滑り込んだ。
雨が漏って困っていた部屋は、物干し場のちょうど下にあるのだった。
私はしゅっと垂直に跳べないので、いつもしているように裏庭の階段を駆け上がり、ジェイのいる物干しまでたどり着いた。
ジェイは物干し場のデッキをずらして、デッキの下に溜まっていた落ち葉や土ぼこりを取り去っていた。
あったよ。
何があったの、ジェイ。
君の部屋への水の通り道。
まあ、そんな通り道があるなんて。誰が創ったというの?
さあ。君の眠りを妨げたいと思う誰か、だよ。
ジェイは笑った。
涼しい瞳がいっそう涼しくなる。
その通り道は、どこ? 見せて頂戴。
もちろんさ。ほら、ここだよ。
ジェイが指し示した場所に、穴があいていた。二つ、並んで。
この穴が、水の通り道?
そうだよ。小さいけれど、どんな小さな穴からでも水は通れるからね。ここを通って、天井に沁みわたって、やがて雫になったのさ。
なんてこと……この穴たちは、いつからこうして水を通していたのかしら。
ずいぶん昔からのように、僕には見えるよ。
まあ、ジェイ。では今のようにとてつもない雨漏りでなく、ずううっと昔に経験したちょっとした雨漏りも、みんなこの穴たちのせい?
そうさ。穴も少しずつ大きくなっていたようだよ。でも……
でも……、なあに、ジェイ。
この通り道をふさげば、二度と君の部屋に、水は滴り落ちることがない。それでもいいかい?
……いいわよ、ジェイ。
ジェイは大きなチューブをどこからかすっと取り出し、そのチューブを目一杯絞って、チューブの中身で穴をふさいでいく。
それを終えるとジェイは、涼しい瞳をさらに涼しげに細めた。
さあ、終わった。
ジェイ……。
ジェイは、来たときのようにしゅっと、いなくなった。私の前から。