Quand elle peint les poissons, elle devient un poisson et nage avec les autres dans l'eau...2012/11/17 23:48:27




『うさぎのまごころ ジャータカ物語より』
武鹿悦子 文  丸木俊 絵
世界文化社(1980年)


うさぎは客をもてなすために自分の肉を供することに決めた。
あかあかと燃える火に身を投じようとしたその瞬間……

月にうさぎの姿が見えるのは、そうしたうさぎの真心を、地上の生き物たちが忘れないよう、肝に銘じさせるためなんだって。

……というお話にいたく感動したからではなく、この絵本の美しすぎる挿画を描いたのが、あの丸木俊だから、私はこの本を持っているのである。

ビナードは原爆の話をするためにトークショーを開いたのではなくて、画家丸木俊の生誕100年を記念した丸木位里、俊、スマ三人展の機会に彼らの絵の解説をするために京都へ来たのだった。

丸木位里・俊夫妻といえば『原爆の図』。その印象が強すぎて、夫妻の画業の実際はあまり知られていないと思う。私だって、全然知らないといっていい。ただ、今回三人展を開催したギャラリーは、ほぼ毎年のように丸木展を開催しており、縁の人の講演やライヴも併せて企画し、丸木家の画業の紹介に努めている。

左の水墨画が丸木位里、真ん中のひまわりが丸木スマ。

アーサー・ビナードも丸木夫妻と接点を持った人だ。そのゆかりを大切にし、ずっと二人の仕事を追ってきた彼は、丸木位里の母親・スマの作品に魅了される。

私自身、丸木位里のお母ちゃんまでが絵を描く人だとは知らなかったので、その豊かな表現力と色彩のセンスに、今回は唸りましたねえ。
上の写真はギャラリーの室内、ガラケーで撮ったので美しくないが、青い葉っぱのヒマワリは必見の一作。

「スマさんは、描く対象に自分がなりきってしまうんです。魚を描く時は魚になる。猫を描く時は猫に、カニを描く時はカニに。なりきって、自分も同じその生物になって、観察する」

そんなわけで、今回はスマさんの作品をけっこう見ることができて、収穫だった。埼玉県の丸木美術館(左サイドバーにリンク張ってます)ヘ行けってことかな?

丸木位里の水墨画と、丸木俊のカラフルな水彩や版画は相容れないようで、そのコンビネーションは実は見事である。合作の代表作『原爆の図』の「夜」、私は今回初めて見たが表装されてて、チョイおろろいた。掛軸になってんのね※、さすが!(いや、そこは賞賛するところではないと思うのだが)。

※三十二年にわたって制作された『原爆の図』は全部で第15部まであるけれども、この「夜」は未完作品である(らしい……。作品を観るとこれのどこがどう未完なのだと思うけど)ゆえに、他のシリーズのように四曲一双の屏風仕立てにはなっていないのだろうか。軸装だと、収納時はまるめているのだろうか。などなど余計なことを考えてしまった。


でも私は、モスクワの香りもかぐわしい「可愛い」絵の数々が好きである。
2点とも丸木俊。