今度の日曜日2007/03/20 11:11:45

今度の日曜日、天気予報は雨。
なんということだろう。こんな大切な日に。

その日は、あるスポーツ(屋外競技)の試合の日で、市内のあちこちから大小さまざまなチームが参加する。娘の小学校ではその競技を部活動で奨励、少ないメンバーながら市にチーム登録している。2年前から参加した娘はその面白さにハマって、一年に1回のこの試合の日をとても楽しみにしていた。この競技は、だんだん広まってはいるものの、まだ子どものスポーツとしてはあまりポピュラーではない。だから競技会はほとんどない。強いチームは大人の競技会に参加しているようだが、娘の小学校のような活動そのものの規模が小さいチームは、この年度末の試合しか力に見合う大会がないのだ。
雨天だと中止。順延はない。だから絶対に晴れてほしい!

一年に1回しか試合がないのでは張り合いがないし、もっと多くの小学校でもこのスポーツに取り組んでほしいし、小規模活動チームであろうと試合の機会は多いほうがいいし、と考えてくださったかどうかは知らないが、昨年、夏に一度試合があったのである。娘のチームでボランティアでコーチをしてくださっている地域のおじさんは、このスポーツの町の協会(そんなものがあるくらいシニアではポピュラーなのだ、このスポーツ)の理事らしいが、他チームや競技場とも調整して、多くの子どもたちに参加できるよう手筈が整えられていたのだ。

それなのに、この部活動の小学校側の担当教諭のSが、参加申込みをするのを忘れていやがったのである。試合の日程は年度始め、つまり4月、つまり3か月も前からわかっていたのに、である。

私たち母娘は、7月のこの試合の日を優先順位ランキングの最上位に置いて、万障繰り合わせベストコンディションで臨めるようにスケジュールを調整していた(←かなり大げさなもの言いをしているが、気持ちの上ではこれでも抑えているくらいだ)。

「Mくんは、家族旅行と重なって、試合出られないんだって」
「そう、残念だね。戦力的にも、痛手じゃない?」
「うん。でも大丈夫。ほかの子も腕上げてるし。今度は負けないもんねっ」
「3月の雪辱戦だなっ」
(二人でガッツポーズ)
連日のようにこんな会話をしていたのだが。

夏休み前のある日、娘は廊下でS先生とすれ違った。S先生は娘を見て思い出したように「あ、そうそう」と立ち止まり、娘を呼び止めてこういったそうだ。
「今度の試合、申込みが間に合わなかったから出られないの~。ほかの子にもゆっといてくれる? じゃ、よろしく」

私は激怒した。
落胆した娘の、この世の終わりのような顔。娘は、その日の出来事をよく話してくれるが、あまり大げさな表現をすることはない。見聞きしたことと感じたことも区別して言える。だから母の私はふだんから娘の言には非常に信頼を置いている。このとき、娘の口からは「S先生、ひどい」の類の言葉は聞かれなかった。そこまで頭が回っていないのだ。ただ試合がなくなったことだけがショックで、廊下では先生に言葉を返せなかったらしいが、ほぼその状態のまま家でもただうなだれていた。
しかし私は瞬時に状況を理解した。S教諭は6年担任、次年度から本格稼動する小中一貫教育制度準備の渦中にあって、連日それ関連の事務雑事に奔走しているようだった。部活動の日はたいてい会議で練習に顔を出したことはほとんどないという。中堅というにはまだ若いS教諭の立ち位置から察すれば山積みのノルマを日々こなすのが精一杯だっただろう(それでなくても小学校教諭の雑務は気の毒なくらい多いらしいし。不要な雑務がほとんどだとは思うが)。
だからって、同情の余地はない。

おそらくS教諭にとって部活動の試合申込みという事務作業は優先順位ランキングの最下位だったのである。
私たち母娘にとってランキング最上位(いや、最上位にランクしていたのは私たち母娘の勝手だけれどもっ)の試合がである。

おさまらない私は翌日、学校にFAXを送りつけた。
3か月も前から決まっていた試合の申込みができなかったってどういうことですか云々。
この日をまず第一目標に練習していた子どもたちの気持ちがわかりますか、先生にはわからないでしょうね、ほとんど練習は見に来てらっしゃらなかったそうですから云々。
制度改変のさなかでお立場上ご多忙はお察ししますが、そんなこと理由にはなりませんよ云々。
全部こなせないなら部活顧問なんて降りられたらどうですか云々。
しかもそんな重要なことを廊下で思い出したように言うなんて云々。
メンバー召集してちゃんと詫びを入れるのが筋と違うんですかい云々。
そして最終段落にはこう書いた。
済んだことはしかたありませんから今後このことをあげつらうつもりはありません、私はこのFAXで言いたいことはすべて言わせていただきました。先生と議論をするつもりはありません。先生の弁解をお聞きする寛容さは持ち合わせておりません。この書面はお目通し後どうぞご随意にご処分ください。

帰宅してFAXのことを娘に言うと、彼女は気絶寸前という顔をして、
「なんでそんなことするんだよー! S先生、普通のお姉さんだよ、お母さんがそんなこと言ったら泣いちゃうよ、寝込んじゃうよ」
「普通のお姉さんだろうと変態のお兄さんだろうと関係ないよ。今回の事務上の不注意、それに事の大きさをわかっていない鈍感さ、態度。S先生には大いに反省してもらわないと」
「S先生に口利いてもらえなくなったらどうしよう」
「親に文句言われたからその子に冷たく当たるとしたら、そんな教師はサイテーだから、そんなのはあんたから無視してやんな、あたしが許す」
「もうっ、お母さんはいつも極端!」

S教諭と、娘の学級担任のT教諭が、私の帰宅時間に合わせて二人で我が家にやってきた。事前のT教諭からの電話に「もう、ほんとにいいんですよ」を繰り返したが、粘られて根負け。言い訳になるのはわかっているけれど、お目にかかっておわびしないと気が済まないというS教諭に、「私に謝ってもらう必要はないので子どもたちに今の話をしてやってくださいね」と私はもうこの話を終わりにした。
S教諭は着任以来、地味だが子どもたちや保護者の人望はあると聞いていた。誠実な教師が凡ミスをしたり軽率な言動をしてしまうほど、学校現場は繁忙で教師の負担が大きく、当の子どもたちがないがしろにされがちだということだ。指導要領をいじくりまわすという愚行を繰り返す前に、中高一貫とか小中一貫とか4・3・2制とか5・4制とか器の形にこだわる前に、教育という領域に携わるエライ人には、もっともっとやることがあるんじゃないのか。教育されるべきはひょっとしてテメエラじゃないのか。
いろいろなことを一気に考えて、非常に肩の凝った夏だった。

と、長くなったが。
貴重な夏の試合に参加できなかったので、恒例年度末の試合への意気込みは、ただならぬものがあるのである。
今度の日曜日。
雨よ、降るな!

コメント

_ おさか ― 2007/03/20 15:02:07

おおお。てっきり関西オフ会かと思ったら(笑)

蝶子さんのお怒りはよおくわかる。S先生が「ダメ教師」じゃないからこそ余計腹が立ったんですよね。うむむ。
大人が周りばかりごちゃごちゃいじくって、子供にしわ寄せが来てる、という感じは以前からあります。現場をちゃんとしないで、どーすんだコラ。

それにしてもお子さん、
>「なんでそんなことするんだよー! S先生、普通のお姉さんだよ、お母さんがそんなこと言ったら泣いちゃうよ、寝込んじゃうよ」
このセリフ。エライなあ。優しい。涙出そうになっちゃいましたかーさん。
みんなで照る照る坊主作ってお祈りしましょう。

_ ちょーこ ― 2007/03/20 17:04:41

おさかさん、早っ。
そーなの、お天気になって機嫌よく試合に行ってくれたら、私は思い残すことなくオフ会でハネのばせるんだけど。

ウチの子は、いろんなこと、「意に介さず」のタイプで、親としては楽ですね。いつまでも気に病むということがない。なので、上の一件のときも翌日にはほぼ忘れていましたね。それに、原因を追求する、という発想がないし。

学校は事なかれ主義なので、こういう負の要素は何にも公にしないですよね。夏の試合も、S先生がウチに来て、また部員の前で「先生のミスだった、ゴメン」と謝ったとは聞いたけど、試合の日程は学校便りにも記載されていたほどで、それがなくなったのに、通知やいきさつなんかは一切報告なし。私なんか、校長名義で謝罪文書が回るべきだと思うほうだけど、変か?

_ mukamuka72002 ― 2007/03/20 18:58:29

とある事情で、この十何年大嫌いな先生の中で半分仕事しています。本当は先生が嫌いなのではなく、先生のいる環境です。背に腹はかえられないので、働いてますが、やっぱり変です。もし中小企業の社員であれば、半年持たない未熟な精神の持ち主ばかり、子どもの心がわからない以前に社会人の心自体がゼロ、今はとにかく情報蓄積していつか爆発させて告発してやる。なにしろ今は息子娘が人質にとられてますからね、奪還したら絶対にやってやる。
ちなみにこれだけは今云える、彼ら全然忙しくない、我が施設に快適な昼寝部屋つくってやり、軽いカクテルつくれる様にしてやったら、毎日最低一人は罠にはまってます、軽く三時間は。今度のオフ会できいてくれたら、軽くご説明します。とにかく、先生世界は変。

_ ちょーこ ― 2007/03/20 19:06:08

mukaさん、先生に囲まれてるの? よくわかんないけど。
教員の世界は変だよ、もちろん。でも、しなくてもいい余計な不要な阿呆なことばっかやって、忙しくしてるのも事実。もっと考えれば必要な時間は半分でいいはず。
だいたい先生同士で先生と呼び合うところから、あの人たちはおかしいんだよ。

_ おさか ― 2007/03/20 19:29:40

うーん、先生はやっぱり現場に出る前に、一般企業の事務でいいから半年くらいやってみるべきだよねえ。

この間もね、一年生の息子が持って帰ってきたお知らせに「さんすうのノート、漢字のノート、こくごのノートは、品切れとなりました。なくなったら自分で買ってください」だって。
一年生の一番最初に、「ノート類は学校で指定のものを使いますので、買わないでください」って言っといて、だよ。ふざけてる。ちなみに息子の連絡帳も、長女のときは自由だったのに、途中で升目の入った(めったに売ってない)ものに変わり、これも「買わないで」とのことだったのに、いつのまにか自分で用意して、なんでもいい、となってる。しかもあと一ページも残ってないタイミングで。学校が用意するっていうから買い置きしなかったのに。どうしろっていうんだあああ!と夕方怒ってました。
こういう細かいところ言い出したらほんとキリない。けど、こういうところに仕事をする姿勢って、出るよね。
もう決定的に、想像力が足りない。これをこうしたら、何が起こるか、考えてない。
仕事バリバリやってるお母様方、文句言いたくなるのも、ある程度当たり前かな、と思う。

それにしてもmukaさんはどういう仕事なのそれ?
オフ会いけないからわかんないよ~。あとでこっそり教えて。

_ 儚い預言者 ― 2007/03/21 01:43:27

 あーー蝶子さんオフ会で会いたかったーーー。
 冗談ではありません、本気です。あなたを口説きたかったのにーーー。
 あっひ、すみません私の聖なる癖がでました。またいっじめてーー。

 まあホント、世の中のシステムがこんなに倒壊しているのに、人は同じように何事かにロボットのように浮遊しながら、感情を置いてきぼりにして、未来への創造もなく、対他は思いやりなく、自分への省みる時間もなく、社会の仔細な約束事を守ることが中心になり、どうしてもという衝動は単なるわがままなと思われ、どこまでも私中心の、いつまでも社会適応だけが本末転倒の世の中。
 目配りは人を思いやる態度であり、学びを教える人の大切な資質であるのに、本質的に何も自分を現さないで、どうしてシステムだけが機能するのだろう。

 人として生きて、愛に生きて、夢に生きて。
 想像が創造になり、宇宙が輝く。

_ きのめ ― 2007/03/21 09:57:16

ヴァッキーさんがおさかさんのとこで書いていたけど、やっぱり寺子屋式がいいのかもね。好きなとこの先生がいる寺子屋に子どもを預ける、寺子屋は教えられる子どもしか預からない。両方に選択権があれば、不信感はそれ以上は広がらないと思う。
親もその先生を尊敬できれば、間違いなくその先生は子どもの師でしょう。他の子の親がその先生を信頼してなくても、親(自分)と子と先生が信頼できればいいだけだと思うなぁ。
とりあえずは、NPO法人で義務教育が行なえるようになることが最初だろうけど、あと30年くらいはかかるでしょうね。でも、そういうのが増えれば、適塾とか松下村塾みたいのができて、日本の新しい夜明け・・・

_ ファイト ― 2007/03/21 14:52:59

>「もうっ、お母さんはいつも極端!」
娘よ、その極端さが何なのかはそのうち解る。
俺のように学校側から煙たがれる人間が必要な時代だ。
いいぞ!蝶子!

_ ちょーこ ― 2007/03/22 14:59:54

預言者様、いつでも私は空いておりますですよ。口説きにいらしてくださいまし。

きのめさん、戦後米国から脱脂粉乳と小麦をおしつけられて給食をパン食にしたときからこの国の教育は崩壊し始めたんで、30年じゃ足りないですよ。

ファイトさん、あら、エールもらっちゃった。ありがとー。
私たちの近くにも、学校から思いっきり煙たがられている保護者、いるんですけど、それは「学校に迎合しすぎる」姿勢のせいらしくて、校長以下教員から「ちょっとあの方は手に負えない」とささやかれているそうな。そういう保護者にはなりたくないもんだと思いつつ、じゃあそういう情報をゲットしてくる保護者はなんなんだ? と思うともはや誰も信用できないって。私も影じゃなんといわれてることやら。

_ トゥーサ・ヴァッキーノ ― 2007/03/25 18:51:34

そうだ!(また思いつき)
子供版文章塾を塾長に新しく作ってもらいましょうよ!
そこで、文章塾の塾生が先生になって、塾生の子供たちに教えたりするんです。
教えてもらうことの有り難さを忘れた子供たちに文章を書く楽しさを!

_ 儚い預言者 ― 2007/03/26 07:22:23

 ゆめにまで
 あなたとふたり
 かたるあい
 あめあがりには
 はなびらゆれて

 昨日はありがとうございました。あなたの笑顔は最高です。これからもよろしくお願いいたします。

_ ちょーこ ― 2007/03/26 15:54:35

ヴァッキーさん、
子どもたちには「書く」ことを厭わないでほしいですよね。
子ども版文章塾、ナイスアイデアだけど、子どものうちは鉛筆で紙に書くことに限定してほしい。

預言者様、
こちらこそ、預言者様にはひれ伏すつもりで行ったのですが、お話していると(話題とは関係なく)町内会の寄り合いに来ているような気持ちになりました。天上からのメッセージを受けるだけではなくベタな人間談義ができて、とてもよかったです。感動しました。堺の伯父もよくウチまで遊びに来てくれるので、預言者様もどうぞ、またお越しやす。

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