赤いずきんはいつも憧れ ― 2007/06/04 07:10:46
スズキコージ 文・絵
ビリケン出版(2000年)
娘の同級生に「すずき」は二人いて、私の同級生に「こうじ」は二人いた。「すずき」も「こうじ」もありふれた名前だけど、イチローが「イチロー」と名乗る前から、スズキコージさんはスズキコージと名乗り、唯一無二のその名を出版界にとどろかせていた。
スズキコージさんの絵本も挿画の入った本ももはや膨大な数である。絶版になってしまった本もまた膨大である。私はその膨大な数の出版物のうちのほんの数冊しか持っていないから、スズキコージさんについて詳しく述べることなんてできないが、とにかく奇才である。
目についたものを素材にし、思いつく方法で絵をつくる。どんな方法でつくられた絵も「スズキコージだー」と走ってこちらに向かってくるような鬼気迫るものがある。私はこの迫力が大好きである。
本書は、まだ娘が保育園のころに、例によって図書館へ紙芝居と絵本の大量借り入れをしにいったときに、赤いずきんのおばあさんの表紙に惹かれてついでに借りたものだった。村のおばあさんたちが誘い合わせてお祭りへ出かけ、お祭りが終わって家にまた帰る、それだけのお話が、スズキコージ節(サイケな絵とサイケな文字と脱力した文)で構築されるとどうにもたまらない可笑しさをふりまくので、私も娘もくくくくけけけけとえんえんと笑い続けた。
画材は色鉛筆。うまくつかえば表現が無限大に広がる画材ではあるが、思い切りがよくないと大胆な絵にはならない。何でもそうだけど、とくに色鉛筆は繊細な表現に適していると思われがちで、使うほうもそういう先入観を持っていると面白い絵は描けない。でもそこは、さすがスズキコージさん、色鉛筆でこの世界!
たぶんスズキコージさんの本は、ご自身の創作絵本(文も絵もスズキコージさんの手になるもの)が他を圧倒して面白い。作家と画家の見事なコラボを実現している本もあるのだろうが、私はとりあえず「スズキコージ文・絵」の本こそが面白いと思っている。
ウチの母も遠出の際には杖が必要だが、この『つえつきばあさん』の域に達するには、もっと腰が曲がらないとならないだろうし、反面、脚が丈夫でないとつえつきおどりも踊れない。つえつきばあさんになるのは容易ではない。