体験学習は希望の糧?2007/06/11 06:38:27

『ぐるんぱのようちえん』
西内みなみ さく 堀内誠一 え
福音館書店(1965年初版第1刷、2000年第86刷)


「希望学」という研究に携わっているある学者さんの講演を聴く機会があった。何か月か前、その学者さんのインタビューを新聞紙上で読んでもいた。いまどき何でも学問になるもんなんだなと妙なところで感心した。あ、もちろん、講演内容にもなるほどと思うところがあった。
彼が言うには、学校で意義のある職業教育を受けた人は高校中退率が低く、正社員として雇用される率が高い。ニートやフリーターになる率が低いというわけである。また、小・中学校時代にもっていた就きたい職業への希望がそのまま叶ったという人はそれほどいないが、軌道修正しながら、どんぴしゃでなくとも遠からずの職業に就くことができた(たとえばプロスポーツ選手を夢見ていたが最終的には体育教師になった、など)、という人も、充実した職業教育を受けた経験がある。ということは、小・中・高における職業教育を充実させれば、現在問題になっている若年失業者の増加を食い止めることができるのではないか……。
「職業教育」の定義はいろいろあろうが、ここでの学者さんいうところの職業教育とは、主に職場での体験学習を指している。
小学生だと一日だけの社会見学が関の山かもしれないが、中学、高校だとある程度の日程を組み、同じ職場に連続して通わせるなどの学習を奨励している自治体もある。そういう体験学習を重ねると、社会人との接触を通じて、職業への理解や発見のきっかけになり、漠然としていた自分の将来がなんらかの像を結ぶようになることもある。夢が具体性を帯びてくることもある。
若者の希望は変わるし、揺れ動く。しかし、希望の芽を潰さないことは非常に重要である……云々。

若いゾウの「ぐるんぱ」は、ひとりぼっち。前向きに生きてこないで、寂しくて泣いてばかり。群れの大人たちは、大きくなったくせにだらだらしているぐるんぱを町へ働きに出すことにきめる。

(無理やり当てはめることもないんだけど)ここまでのぐるんぱ、まるでニートか引きこもり。

町でいろんなお店を訪ね、雇ってもらうけれども、見当違いの仕事をして叱られ、クビになってばかり。

(無理やり当てはめることもないんだけど)このあたりはダメフリーターのぐるんぱ。

くじけそうになるぐるんぱだが、たくさんの子どもたちの世話をするはめになり、やがて幼稚園を開くことを思いつく。あちこちのお店でつくってきたものを上手に使った、子どもたちの笑顔と歓声のあふれる「ぐるんぱのようちえん」。

おお、あまたの体験を生かして希望を捨てず、立派に職業人(ゾウ?)となったぐるんぱの物語である。

……・という解釈には無理があるかな? わはは。

途中、さまざまな仕事に就くくだりで、各職場の親方の態度はおもいっきりぐるんぱに冷たい。大きな体のぐるんぱが小さくなって「しょんぼり」するところ、幼児期の我が娘はあまりにも可哀想だといって大泣きした。
つらかったけど、よかったね、ぐるんぱ。
この絵本はそういうオチで、泣いた子どもも最後はにっこり、の絵本なのであるが。
どうも、この絵本を地でいっているような気がしなくもないのである、やっぱし。何がって、日本の社会が。