切ったほうがいい場合もあるのだ2007/06/21 07:36:34

まつぼっくり。
横にあるのは(ミニチュアじゃない普通の)マッチ箱。
んー。ほんとにこれ、まつぼっくりと呼んでいいのか?


『のどか森の動物会議』
ボイ・ロルンゼン作 カールハインツ・グロース絵
山口四郎訳
童話館出版(1997年)


これも森のお話。
「のどか森」の隣には「かわず村」があって、森と村は仲良く持ちつ持たれつしてきたが、あるとき村民はいきなり「大金持ちになりたい」などと思い始め、そのために森の木を切って売ることを、村会議のときに満場一致で決める。
人間の言葉がわかる賢いカラスのヤコブスは、これを聴いて仰天。大慌てで森へ帰る。
森には動物たちのまとめ役として、木の根っこの妖精、ペーターがいた。ヤコブスの報告を聞き、ペーターは知恵を絞る。動物たちに全員集合をかけ、会議を開き、かわず村の連中になんとしても木を切らせてなるものかと、一致団結して行動に出る。
人間と動物の駆け引きが始まる。
動物があの手この手を使っても、人間は容赦なく木を切る。
しかし、動物の仕返しも、容赦ない。
平和だったかわず村の、人々の心が少しずつすさんで……。

のどか森とかわず村は、最終的には和解する。
根っこの妖精ペーターは、数を決めて年に数本の木を切り、あらたに植樹をしてほしいと提案する。そうすれば森にとってもよいし、村のみんなも潤うはずだと。

なんというか、とっても優等生的な終わり方が、途中のハチャメチャな動物たちの行動に比べると落差があって物足りない。けれども、小学生に読み聞かせるには、これくらい真面目で正しい終わり方のほうがわかりやすくていいのだろう。今後について何も示唆していないし、村と森のいい関係が未来永劫続くと感じさせて安心できる。環境問題や地域社会の人間関係についても投げかけて、とってもためになる。単純なウチの子にも理解でき、満足できた貴重な一冊。

ただし、登場人物の名前がすべて律儀にドイツ語発音を仮名表記してあって、舌をかみそうになるのが辛かったよ。シュトッフェルとか、チムトチッケルとか、ジギスムントとか。せっかく「のどか森」「かわず村」という名訳をしているのだから、人物名もちょっぴり工夫して欲しかった。……というようなことを愛読者カードに書いたりしている私。

日本の山地にも根っこのペーターみたいなのがいてくれたらな。ちょっとお役人さん、あのスギやヒノキ、切ってくださいよ、そして温かな木の家をもっと建ててくださいよ、無味乾燥な鉄骨とタイルのビルばかりじゃなくて。スギやヒノキは、花粉を撒くだけの人生はもういやって言ってるんですがね。