流行っているもの2007/12/17 18:32:14

千鳥格子の「ふとん」とウチの猫。


娘は「ウインドーショッピング」が好きである。
いわゆる「冷やかし」である(笑)。

こないだ思いもかけず繁華街で使える割引券をゲットしたので、久しぶりに外食に出かけた。
道ゆく人が服装に上手に千鳥格子を取り入れているのに出会う。
「千鳥格子、やっぱり流行ってるんだねえ」
「チドリゴーシ? 何それ」
「千鳥は鳥のこと。格子はチェックのこと」
そう言ってから、説明しようと思って大柄な千鳥格子を着た人を探したが、探すといないものである。
レストランに行く前に百貨店の婦人服売場へ寄って、「ほら、これこれ」と千鳥格子の説明をする。千鳥が飛ぶ姿に似てるからだといっても想像できないようだ。文様の知識がないからそれはしかたがないなあ。
とはいえ、婦人服売場はけっして千鳥格子だらけではなかったので、「ほんとに流行ってんの?」と娘は疑いの目を向ける。「うーん、そうらしいよ」「じゃ、数えよう」
というわけで、帰りのバス待ちの間に、バス停の前を行きすぎる人を観察した。20分弱の間に千鳥格子を身につけた人、25人。うち18人がマフラー。白と黒の千鳥はほぼ全員。ベージュ×白(コート下から覗いたスカート)、赤×黒(ワンピース)がそれぞれ一人いた。
「流行ってるでしょーが」
「ほんと。ウチにある?」
「うん、あるよ。おばあちゃんのジャケットと、ひいばあちゃんが着てたコート」
「今流行ってんのに、なんでおばあちゃんたちばかりなの?」
「昔からある柄なのよ。千鳥って着物の柄からきた名前だし」
「お母さんは嫌いなの?」
「嫌いじゃないけど、どうも似合わないような気が……」

前にも、ウインドーショッピングに街へ出かけたとき、ショート丈パンツが流行っているよという話をして数えたらものすごい数になった。
こういうふうに数の当てっこをするのが、私たち母娘の街でのささやかな楽しみである。
近い数値を予測するのは私のほうだが、人を観察することの面白さをより堪能しているのは娘のほうである。「似合ってない」だの「膝が曲がってる」だの「色のバランスがイマイチ」だのかなり偏見に満ちたファッション評を展開する。「あの人美人」「彼氏ダサー」(おいおい)。
でもけなすばかりでなく必ず「ああいう格好ならしてみたい」と羨望の眼差しを向けるケースがひとつふたつ、ある。向けられた女性がどこから見てもお洒落だとは限らないところが我が娘ならでは、なんだけど。

ウチへ帰ると、よく目につくところに千鳥格子を発見した。猫のふとんにして食器棚の上に敷いてあるのは、私の母の古いニットスカートである。これを着用した母の姿を私は思い出せない。高校時代の冬の夜、試験勉強するときにひざ掛けとして譲り受けたものだ。とうの昔にスカートとしての使命を終えた千鳥格子。
「いいなあ、おまえ、流行の最先端だよ」と、私たちは猫を見て笑った。