「本」にするということ2008/06/11 19:35:42

前のエントリーで紹介した展覧会THE LIBRARYは、もう10年以上続いているけれど私は寡聞にして知らなかった。

昨年、製本のイロハを学ぼうと思って半年間、カルチャーセンターの教室に月2回の割合で通い、やっとの思いでつくった一冊を、教室からのグループ出品という形で、とある手づくり本展覧会(兵庫県)に出させてもらった。その会場で、今回のTHE LIBRARY 2008を知ったのである。

とある手づくり展覧会(兵庫県)は、こぢんまりしているがなかなかしゃれた造りのある美術館の一角を借り、たくさんの手づくり本が並べられていた。私の作った本なんぞは、数多のアートな表現に圧倒されて隅っこで小さくなっていたが、それは致しかたないとして(笑)、そこで展開されていた「本」としての表現方法の多様さにいちいち感心した。

これが本か?みたいなのは別にして、たいていの作品は、そこに絵や写真や文章が載っているページを重ねてある、という形態をとっている。表紙があり、めくると中身が現れ、順次めくると読み手のなかにストーリーが紡がれていく、というものだ。

はっきりいって、意味のわからないものや、文章の稚拙なもの、思いはあるんだろうがよく伝わってこないものなど、文章にしろ絵にしろ全体の装丁にしろ、自己満足の域を出ていない独りよがりなものが多い。
だけど、こうして「本」にした時点で、少なくともそこに書かれたテキストにとってはかなり大きなワンステップを上ったことになると思う。

最初につくった猫の絵本や、ろくこさんの……を素材にした今月の出品作なんて、これまたはっきり申し上げるが、とても鑑賞に値するようなものではない。私は自分でつくっていてとても楽しい&嬉しいからつくっている。仕事の合間の、片手間作業だから、とても渾身の一作とはいえない。けれども、形になる前はただ私の頭の中のあやふやなイメージでしかなかったものや、パソコンの中のいちテキストデータが、ある衣装を纏って「実物」として立ち上がろうとする過程、「本」をつくっているとそういうワクワクどきどき感を味わえる。そして、できあがったら、描き散らしたらくがきのような絵や、数キロバイトのわずかな文字データが、三次元の立体となっているのだ。

だって、「本」は、縦×横×厚さ という立体物なんだもの。

デスクトップの平坦な画面にざー、ざー、と流しだされる文字データでは、もうないのだ。
ダブルクリックして開いてスクロールして読むものでは、もうないのだ。

「本」は、あなたがその掌にとり、その指先を使って表紙をめくらなければ中身を見せてくれはしない。そして、一枚ずつ、ページをめくらなければ物語を読み進むことはできない。過って二枚いっぺんにめくってやしないかと、指の腹を使って確かめることも時には必要であり……。

とてもとても観るに耐えないような、私の造形物なんぞ、ほんというとどうでもよいのである。(いえ、もちろん観てほしいけどー。ろくこさんごめん)
「え、これがそう?」
「なーんだ」
「わざわざ観に来てやったのにさー」
「ろくこさんがお気の毒ー」
などと評されるのは目に見えている(汗)。

当ブログに来てくださる方はみなさん、自身もたいていブログなりサイトなりをお持ちであり、日々何らかの文章をしたためることを常としてらっしゃる方々である。その方々に、
「デスクトップの平坦な画面にざー、ざー、と流しだされる文字データ」
「ダブルクリックして開いてスクロールして読むもの」
から、こんな方向へ踏み出してみるのはいかがですか、と問いかけてみたいのである。

みなさんのテキストは、立体になる資格がある。
立体になれば、そのテキストは、今とは違った思わぬ方向へ読み手を誘うはずだ。
みなさんのテキストは、そういう賭けに出る資格をもっている。

「私の文章の加工方法を探すためのサンプル展示」
そう思って足を運んでいただくというのはどうか。

http://www.h3.dion.ne.jp/~artspace/library2008.html


(私とは違って渾身の大作を出品される方にはまことに失礼なもの言いになるけれど、作品を貶める意図はまったくありません。勉強させていただきます!)

コメント

_ きのめ ― 2008/06/13 12:12:44

確かに本作りは苦労も多いけど、おもしろいですねー。

またやろうかしらん。

_ midi ― 2008/06/13 18:31:12

↑ えっ ほんと?
こんどは、どんな? わくわく。

_ ろくこ ― 2008/06/14 21:50:17

先日蝶子さんとお目にかかったとき
面白い本をつくりたいんだーっていう
熱い想いをお伺いできてよかったです
装丁とかそういうこと
あんまり気にしてなかったような気がする
美しい本、面白い本、中味だけではなく全体が芸術なんですねぇ

_ midi ― 2008/06/15 23:03:24

偉そうに語ったわりには、今回作ったものはへにょへにょです。
開けてびっくり玉手箱〜 とか
呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃじゃーーーん とか
そのくらいの迫力もたせたかったんですが、
なんやこれ、まんまやん、という感じ。
ごめんね。見てのお楽しみです(笑)

次は何を本にしようかな、と思案中。

_ KEN ― 2008/06/23 22:51:50

行ってきました~!(笑

_ KENさま midi ― 2008/06/24 05:42:11

キャー−ーーーーー♪
あんがとおおおおおおーーーJe t'aime!!!!!

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