「コックリさん」に代わるコワオモシロイ修学旅行用の遊びを流行らせたかったわけだなと妙に感心したの巻 ― 2009/02/17 19:41:03

『親指さがし』
山田悠介 著
幻冬舎(2003年)
超怖がりのウチのさなぎが同じように超怖がりの友達・しのぶちゃんから借りてきた本。
「お母さんこれ読んで」
「へ? ホラーを読み聞かせろって?」
「違う、読んでみて。感想を聞かせて」
「なんで」
「だって……」
「そんな怖いもん、何で借りてくるんよ」
「だってしのぶが……」
「面白いから読めって?」
「ううん、怖いからもう持っていたくないって。もらってって」
「はいぃぃ?」
「夜寝る前に読んだら、眠れなかったって」
「で、しのぶがそんなに怖がっているモンをおめーはなんだって引き受けるんだよ」
「どの程度怖いのかお母さんで試そうと思って」
「あほ」
「だから読んでよ」
「読んで、全然怖くないよっていったら、おめーは読むのか」
「……」
「あほ」
可愛い娘の望みを叶えないわけにはいかないからハイハイと読んだのだが、どう拡大解釈しても深読みしても裏の裏まで探ろうとしても、怖くもなければ面白くもなかったのである。いちおうホラーでミステリーなので内容には触れないでおくけど、全然ストーリーを変えた映画の原作(原作っていっていいのかこの場合)にもなったので、あらすじをご存じの方も多いと思う。
20歳を前にした主人公が小学校6年生の頃に思いを馳せ、当時から抱えた謎を解き明かそうとする、という設定だ。
対象読者層としては十代の若者が思い浮かぶ。しかし。
そうした設定であっても、30過ぎた大人や、もっと上のオヤジやオバハンが読むに値する小説はゴマンとある。でも本書は、大人が読むものではない。なんだこれ、つまらない、と思うだけである。気の短い人は数ページでやめてしまうだろう。こんなものが立派な本になっていることに怒りを覚える人もいるだろう。
20代の皆さんは、就職活動あるいは就職した人ならなおさら目の前の仕事にいそしむばかりの日々で大変に忙しいはずであるから、こんな本は読まなくていい。
想像力たくましい小学生の中には、陳腐な表現でも恐ろしい鬼のような女の顔を思い浮かべてそのイメージのせいで悪夢を見て眠れない、などといったことがあるかもしれない。だから、小学生には読ませてはいけない。もっと良書を与えましょう。
部活でメインメンバーとなる中2、高校受験を控えた中3は、こんなものに呆けている暇はない。
高校1年、2年は高校生活が楽しすぎて読書どころではないはずだ(笑)。
したがって読者の対象年齢は限られる。12~13歳と17~18歳である。中1と高3。
多少考え方や会話がませてきて、友達どうしの情報交換も活発になり、なにかにつけて、ひそひそこそこそ……うっそーわーきゃーマジーやっばーありえねーと叫ぶ中学1年生あたりは、怖いもの見たさでつい突っ走るので、上のしのぶちゃんの例に見るように、ピンポイントターゲットである。
高3は、なぜかというと、これは自分の経験なのだが、受験勉強で疲れた頭を休めるには考える必要のないくだらない本がよく効いた。それと、もう1、2年であたしハタチのオバハンになっちゃうんだあ、という、今思えば甚だ不遜な考えが頭を支配していて、何かと子どもの頃を思い出したり、小学校を懐かしんだりというノスタルジーにひたることがあった。そういうココロをくすぐるためには別に悪くない本である(もっといいものはほかにあるよ、もちろん)。
私の頃の高校3年生と今の高校3年生とではいろいろなことが大きくかけ離れているし、必ずしも誰もが郷愁を覚えるなんてことはないと思うけど。
そしてなぜ19歳を外すのかというと、一般に高校を卒業しており免許をとる資格のある立派にオトナな19歳には、こんなくだらない本を読んでほしくはないからである。
いったいこの本、どういうところに位置しているんだろうと思ったら:
「限られた予算でいかに中高生の口コミを喚起するか」
ということを目的にした小説らしい。
インターネットには「呪いのバナー広告」が掲出され、クリックするとろうそくが灯るだけの「呪われたWebサイト」に飛び、
「親指をかえせかえせかえせ」……(笑)
と表示されるのか音声が流れるのか知らないが。
わーきゃーこわいーーーねえ、ちょっと、あれ見た?
と、噂になって中学生が「親指さがし」で遊んでくれればオッケー、ということなのだ。
文学的なあれこれには、そんなのカンケーねえ、と。
読み終えた私は本をさなぎに渡して、正直な感想を述べた。
アホな娘は「全然怖くない」との私の言に意を強くし、今本書を読んでいる。
数ページ読んだところで、「すっごい読み易い!」
あちゃ。
読み易い、ときましたか。
たしかにそうかもしれない。
表現に何の工夫もないので、引っ掛かることがない。この人物、いったい何を考えてるんだろうとか、このシーンはあとでカギになるんだろうか、とか、読者を立ち止まらせて文章を噛みしめさせたりすることがない。
すっすっすと読んでいくとだんだん「くるぞくるぞ、きたー!」という感じで見せ場が訪れるが、そこらあたりの描写が、12、3歳の、本を全然読まないで中学生になった子らはちょうどいいかもしれない。
だんだん怖くなってくるところで、臆病者のさなぎは読むのをやめるであろう。彼女には読了するという使命感は皆無だ。読み終える、という行為はけっこう大事なんだけどなあ。でもま、今回はそれでもよしということで。
コメント
_ 儚い預言者 ― 2009/02/18 01:18:40
_ よっぱ ― 2009/02/18 01:41:38
ここまで素敵な感想文と言うか批評は他で読んだことがありません。
いつもは怖くて黙っている僕もコメントを入れてしまいました(笑)
先日は素敵なblogをご紹介ありがとうございました。ぺこり
_ midi ― 2009/02/18 09:07:20
預言者さま
ははは、怒ってるんですか、例の泥酔大臣に?
娘が国語の授業で「二十歳になった自分への手紙」を書いたといっていました。その文面の中で「今の総理は誰ですか」って書こうかと思った、けどやめた、らしいです(笑)
ところで、メール見た?
よっぱさん
何でも書いてってくださいよーなんなんですか、「いつもは怖くて黙っている僕」って(笑)
ところで、いいでしょ、彼のとこ。すごい雪でしたね、昨日。同じ自治体とは思えない(笑)。
_ midi ― 2009/02/18 09:46:10
気持ちの上ではご近所なもので。
_ なまけもの ― 2009/02/18 18:24:33
そうだ、やってみよー。
「親指さがし」を読んで怖くなったりしたら、
そんな自分が怖いと思いました。
_ midi ― 2009/02/18 19:32:46
お茶のパン、おいしいよん。
抹茶は「お菓子用」とかで売っているもので十分です。
煎茶葉は雰囲気だけなので、なくても。
>そんな自分が怖いと
いえいえ。無垢な童心をお持ちということにしましょう。試す?(笑)
_ コマンタ ― 2009/02/19 00:19:32
教育は、これがなんの役に立つのかわからないというところに放り込まれて、そこをくぐり抜けることに価値がある、みたいなことを内田樹氏が語っていた記憶があります。
それを思い出して、意味があったのかなあといま思い直しています。学校時代に読まされた教科書の文豪がわかりにくかったことに。一概にいうことは避けなければなりませんが、たとえば漱石の良さは中学生くらいじゃわかりませんよね。
_ midi ― 2009/02/19 05:24:10
ツボ、といえばそうなのでしょうね。小難しいことを避けたい年頃にはまっちゃんでしょう。しかしそういうものばかりでは、頭は耕されない。わからないまま、ひっかかったまま、大人になって、ある日ふと何かの弾みに「そういうことだったのか」と膝を打つ。そういうことが大切なんですよね。
とりあえず、さなぎは今定期テストのさなかなんですが、息抜きに読んでますよ(笑)。
_ BB ― 2009/02/19 10:20:11
相変わらずの midi さん節のボケと突っ込み、懐かしいです。(笑)
学生時代のまんまやなぁ〜。
娘さんとは面識が無いから勝手に想像してますが、二人の会話が目に浮かびますよ。
先日、テレビでこの手の子供向け怖い話をやってて、普通「ふん。」って思う内容やし、それほど恐がりでも無いと自分でも思ってたんやけど、ここって山奥なもんで見終わってからかなり気持ち悪かったです。(笑)
山奥でしかも1人で見たり読んだりするもんじゃ無いですね。(笑)
昨年の暮れからちょっと目のトラブルで読み書きに不自由があったんやけど、やっとなんとか出来る様になって来たところ。
midi さんのブログ見てると読みたくなってきましたよん。
これからも midi さん節楽しませてもらいます。
ところで、なんでパンなん?って思ったら自分で焼いてるやね。
ではでは。
_ midi ― 2009/02/19 18:25:40
ウチの子がまだ赤ちゃんやったときに、会うてへん? 記憶違いかなあ。どっちにしろ、今はすっかり生意気になってさ、あたし並みに別嬪になってさ(笑)、あたしより背も高いねん。
みなさま、BBさんブログは素敵ですよ♪ ぜひ訪問してくださいね!
私、小中学生の頃、怖い話を披露しあってわーきゃーと盛り上がるのは好きでした。
ホラー映画も大好きでした。いっぱい観た。
でもテレビでそういうネタもんの番組見るのはきらい。胡散臭いし。BBさんみたいに山奥住まいじゃなくても、後味悪いと思う。
目はもうすっかりいいんですか? つまらんもん読んだらまた悪くなるよ。良書を選びましょう(笑)。
_ 儚い預言者 ― 2009/02/26 21:30:12
私はあなたの花粉だった。それは嫌がれ、ティッシュに絡められて、ゴミ箱行きである。捨てないでーー。あっひ、だから私はティッシュいえ花粉ではなかった。あなたを包むのは私の愛なのだから。
この全なる愛は、花粉を包み込み、偉大なる鼻水いえ、宇宙の輝きのなるのだ。バッシー、あほ、しっしっし。
_ midi ― 2009/03/02 13:41:18
たびたびのご来訪ありがとうございます。
大きなイベントがひとつ終わってようやくほっとしているところです。
花粉は憂鬱ですが、春の陽射しはやはりウキウキします。
花粉にめげず布団も干し、窓を開け放つ私でございます。
_ おっちー ― 2009/03/05 12:00:44
僕東京ですが、おとといの『晴天』+『強風』の2段構えの攻撃は厳しかった!
薬飲んでても、いつの間にかタラーですものね(笑)。
今日は鼻の周りの皮膚が剥けてます。。。
しっかし、『お勧め本』じゃなくても記事にするんですね(笑)。正直だなあ。
母娘の会話と、「読み易い」で笑いました。
_ midi ― 2009/03/06 04:58:34
そう、花粉組です〜憂鬱ですねえ。雨の日は楽ですが、普段チャリンコで行動する私はそれも困るし(笑)。
>しっかし、『お勧め本』じゃなくても
いま世の中には、とてもじゃないけど「お勧め」できないような本の方が、多いでしょ?ろくでもない本にあたる確率の方が高いからさ、どんな本だろうと思いついたら書いとかないとブログが成り立たないよ……というのは更新さぼってることへのいいわけですけど(笑)
夢見る中一、大人一回りの原点には、世界への探求と、世界とのコネクト。それは言葉を換えれば、ほにゃらにゃほへとちとしらんぺり。あっひ、呂律がーー。バッシー、いえちょっとたしなんだだけでちゅ。はい、私は宇宙の愛見守り大臣を自然、いえ辞任いたちまちたーーー。
こんな大人を見習ってはいけませんでちゅよ、はい。
振り返ればそこにあっ、夜の洗面所では決してしてはいけません。あなたの手を掴み、反転空間一面平面鏡面へと引き摺り込まれますーーー。助けてーーー。たす・・・け・・・・・・。