私たちのお妃さまは? ― 2007/06/13 20:50:49
マルク・カンタン/文 マルタン・ジャリ/絵
中井珠子/訳
BL出版(2000年)
マルク・カンタンは大好きな作家の一人である。偶然手にしたある本がきっかけですっかり気に入り、ばたばたとほかのも買い込んで読みあさり、ますます気に入って、本人のHPやブログまで行って「あたし、あなたの本大好き! いつか必ずあなたの本を翻訳するわよっ」などとファンレターならぬファンカキコしたりしている。誠実なカンタン氏は「光栄です、その節にはぜひよろしく、マダム」なんてちゃんとレスをくれる。
もうおわかりかと思うが、「翻訳するわよっ」といっといて、私は一冊も実現できてないでいる。カンタンの邦訳書は『おきさきさまのアンナはふとっちょ』だけなのだ。
ある平和な国の、美しいすらりとしたお妃さまがある頃からむくむく太り出す。国民は文句をいう。食べ過ぎじゃないのか? ドレス代だってかさむぞ。お妃さまのふとっちょ反対! しかし王様は毅然と言い放つ。「お妃は今の姿がいちばんきれいじゃ!」
お妃さまのお腹はどんどん大きくなる。王様は前からメタボリックなお腹だったので、お二人並ぶとド迫力。しかし国民は今ではそんなお二人のお姿に誇りを持つようになった。そして。
話の最初からオチの見える単純な構成。たぶん原書には、言葉遊びがてんこ盛りなのであろう。訳者の苦心が窺える。が、窺えるだけなので、やはりこの本の魅力は、愛するカンタン氏には悪いけどマルタン・ジャリの絵に尽きるのだ。
有元利夫という夭逝の画家をご存じだろうか。静かな、不思議な世界を描いた。イタリアのフレスコ画の影響を受けたらしいが、たしかに彼の絵は、イタリアの田舎町にある古びた教会の物置部屋からひょっこり出てきたように感じられる。しかし彼は1985年に38歳で亡くなった、現代の作家だ。私は亡くなって間もない頃に開催された回顧展でその作品群に出会った。静かだが、その絵を見つめていると、音が聞こえる。その音とは小鳥のさえずりとか小川のせせらぎなどではなくて、2軒向こうの家で少女が練習しているピアノの音、通りがかった建物からもれてきたヴィオラの音……。何も主張しない。たたずむ絵。絵はこちらを見もしないし、語りかけもせず、そこにあった。
ジャリの絵は有元さんを彷彿とさせた。似ているわけではない。だが、もしも有元さんが、そんな仕事はされなかったが子ども向けの絵本をつくったら、こんなふうになったのじゃないか。そんな安易な結びつけかたはどちらの画家にも失礼だけれど、私の頭の中では、ジャリの絵が有元さんの絵の記憶を呼び覚ました。ジャリの絵を見ていて聞こえてくるのは、ボリュームを抑えたフレンチポップスだけれど。
ところで、わが国のお妃さまはお元気なのだろうか。私の母は大の美智子さまファンである。テレビで何かやってると食い入るように見ている。いっぽう、どちらかというと左の私は(どちらかというと、というのがすごくずるい言い方だなと書いてから思ったが)、まったく関心がないにもかかわらず、現在の妃殿下に間違われたことが、半端な回数じゃなく、ある。御成婚前でそれなりに国民の関心が高まってた頃だ。だからさ、そんな時の人が今頃こんなとこほっつき歩いてるわけねーだろ。間違われるたびに心の中で毒づいた。今、その話をしても周囲は誰も信じてくれないが。
ところで、明日から我が地方は梅雨入りだそうである。汽車ポッポテンプレには早くも飽きてしまったので、梅雨入り記念にアンブレラテンプレに変えようかな。明日の更新時には、このブログもぴっちぴっちチャップチャップらんらんらん♪になりますのでよろしく。
コメント
_ おさか ― 2007/06/14 11:51:57
_ midi ― 2007/06/14 16:06:59
柳美里にも、笑いました。たしかに(^^;)
バリキャリがいきなり、お嬢(しかも古い)の世界、面と向かってはっきり批判も意見もしないかわりに、雰囲気・評判・マスコミへの垂れ込みで、真綿で首を絞めるようにネチネチと追いつめる、よーな世界に放り込まれたわけだから、おかしくなるのは当然。あの旦那もね、いい人なんだけど真っ正直すぎて守りきれていない。味方より敵を多くしてどうする。・・・・ってそういう話じゃなかった(笑
アマゾンで検索したら出てきました。表紙だけだけど、日本人には出しにくい色と線ですなあ。形も素敵♪おきさきさま、柳美里に似てるぞ(笑