Dear friends...2011/06/16 10:52:44

震災や原発のことを口にするのは「大変憚られる」というムードが、こちらにはある。いや、こちらというのは関西を意味するつもりで書いたけど、今ふと、それは私の周りだけかもしれない、と思った。そうだ、きっとそうである。私は広告業界に足を引っ掛けている。報道や議論の現場からはあまりに遠い。広告業界は美しいもの、心地いいものだけを追求する業界なので、気持ちが曇るようなことは表現してはならない(これが芸術とは大きく違うところだ)。たったひとりからのクレームでも大問題。だからクレームがこないように、疑わしきはすべて取り去るか薄めるかモザイクで隠す。こんな業界以外では、きっと活発に率直に、口に出し声を挙げて意見を交換しているのだろう。
取材(たいへん明るくノーテンキなネタでの取材)で自治体首長に会うことが多いが、話のついでに東北のこと、震災のこと、原発のこと、政府のこと、節電のこと、尋ねてみたい気に駆られる。だが、仲介する代理店やプロモータに「触れないように」と、あらかじめ釘刺されたりする。で、私は「今回の取材趣旨とはまったく無関係ですものね。心得ておりますよ」と答える。「でも、あちらから話題に出されたときは話の腰は折りませんよ」と言い添えるのを忘れないけど(笑)。

いずれにしろ、職場や顧客・取引先などでは全然話題にならない。関電が15%節電しろといい、隣の府知事が「んなもん知るか」ってわめいたという報道記事は多方面で共有しているはずだが、それが雑談にすら出たことはない。こんなとき、何かを述べることは、どっちかの「側に立っている」ことである、そう相手に見透かされるのが怖いのである。相手あっての商売をしているから、「あ、こいつ反原発派? じゃもう発注するのやめよかな」なんて極端な例だが、でも、そういう事態をお互いに避けたいので、主義主張はしないのである。どっかの都知事が集団ヒステリーと形容したのは的外れではない。ある側から見ると反対側はそう見える。たとえば、私はシーなんとかいう、日本の調査捕鯨船の仕事の邪魔をする変な集団、あの人たちのことなどを、都知事の言葉を借りれば集団ヒステリーだと思っているが、鯨愛護者、捕鯨反対の人から見たらシーなんとかさんは至極真っ当なのである。
仕事に直接関係ないことで意見対立してしまったら、その後「やりにくくなる」。それは非常に「不都合」だ。

だから公の場では、尖った刃の先を折って磨いて丸めて「長いもの」の色に染まった当たり障りのないことしか書かないマスコミの振る舞いをほぼなぞるかたちでしか、お互いに発言しない。

今、そういう場に身を置くことが非常にしんどいのだろう、私は。
「のだろう」としかいえないのは、実際のところ自分でも確信がもてないからだ。

私を知る人は「嘘つけ」と笑うだろうが、私は実はあまり喋らない。とくに親兄弟の前では喋らない。「あ」「うん」「ん」「いや」「まあ」「そやな」くらいしか言わない。娘に対してだけは話をするが、必要な時に限る。だが私と喋るのが好きだという友達は多い。それは無邪気な要請なので喜んで応じるし、そんなときはよく喋る。だが身内の前では喋らない(たぶん父も母も、無愛想な娘だ嫁の貰い手がないのも道理だと思っていたに違いない)。いや、べつに珍しくもないだろう、こういう人間は多いはずだ。仕事で顔も性格もつくっているので帰宅すれば反動がくるだけだ。喋るのはエネルギーの要ることだ。精根尽きて帰ってさらに消耗するのは耐えられない。
それでも、たぶん、余力があったら、私は、四六時中わめき散らすに違いない。アホボケカスーの罵詈雑言に留まらない。余力があったら、仕事なんて放り出して奔走するだろう。おさかさんからは余計なお世話よと門前払いを食らうかもしれない(笑)けど、友達のもとへ、福島と、茨城と、埼玉と、群馬と、神奈川と、静岡と、そして東京にいる、大切な友人たちのもとへ走って、逃げて逃げてーなんて、叫ぶのである。

でも、しない。
そんな簡単に家捨てて逃げられるわけないでしょ、といわれるに決まってるからではない。
そんな簡単に東海・関東・東北へなんて行けないからだ、私が。
生活に追われる一般人に過ぎないからだ。

行動していない分、口に出して主張していない分、ブログには非常に無節操にあれこれ書き、無節操に人の発言を引っ張っている。たいへん不健康だ、ある意味。ときどきふと我に返ったりして、『つえつきばあさん』のこと書いたりもするが、なんか、とってつけたみたいだな。

なんにせよ、喋る余力はなくても書く余力はあるつーこった。
バランス悪いな。

不健康なのは、バランス悪いのは、ブログだけではない。
私もだ。
「真面目な話、一度ちゃんと診てもらえ」と人から言われた。
(イケメンドクターに会えたらめっけもんやんけ、なんてつけ足すから真面目に聴く気が起こらないのだが)
人の心配する立場ではないのだ。
ないのだけど。


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2011年6月14日(火)、TBSラジオの番組「ニュース探求ラジオ Dig」
小出裕章氏(京都大学原子炉実験所助教)
神保哲生氏(ビデオニュース・ドットコム)
竹内香苗氏(メインパーソナリティ)

http://hiroakikoide.wordpress.com/2011/06/14/tbs-dig-jun14/

(……からインタビュー部分のみ抜粋)

竹内)福島原発の中はどうなっているか?
小出)分からない。私たちのような人間にとって最も大切なのは正確な情報で、それに基づいて判断し状況を伝えるのが責任だ。これまで東電と国が公表するデータに基づき自分の推測を伝えてきたが、そのデータが次々と覆されてきた。前にお伝えした推定が全く違っていたことも度々あった。現在実際にどうなっているのかは分からない。

竹内)具体的に言うと?
小出)決定的に重要なのは、水が原子炉の中にあるかないか。従来東電は炉心に半分まで水があると言ってきた。それを聞いて私は燃料の下半分は形があり、その状態であれば水を入れ続けることで原子炉を冷やせると思ったから、水を入れ続けて炉心の崩壊を防いでほしいと思ってきた。そのために循環式冷却回路を作るべきだと伝えてきた。ところが、ある段階で東電は水は無いと言い出し、メルトダウンという言葉をつかって炉心が溶けていることを認めた。これには二つ意味がある。一つは、炉心が溶け落ちるときに水蒸気爆発が起き、圧力容器が破壊され、その外側の格納容器も破壊され、破局的な事態になると思ってきたが、既にメルトダウンが起きている中で事実として水蒸気爆発は起きていないということ。最悪の事態は回避され、ほっとした。もう一つは、メルトダウンが起きたなら圧力容器は無傷のはずがなく、燃料が格納容器に落ちて、溶けたウランの塊が格納容器の損傷部分を通って更にその下に落ちている可能性が強いということ。

竹内)恐れていた最悪のシナリオが回避されたとしたら、いまの時点での最悪は?
小出)本当に回避されたかは今でも分からない。東電が水位計を調整したのは1号機だけで2、3号機については未だに分からない。私が恐れているシナリオが回避されたとは断言できない。1号機については東電が言うことが正しいとすれば炉心が格納容器の底に落ちており、私は格納容器も損傷していると思うが、こうなると冷温停止は全く不可能。その場合、原子炉建屋全体を覆うような仕組みをつくる方向に転換しないといけない。かなりの深さまで壁をつくり、地下水と接触しないようにする必要がある。

竹内)それは時間を争うか?
小出)もちろん。どこまで落ちているか誰も分からないが、地下水に触れると汚染はどんどん広がる。

神保)最悪のシナリオは水蒸気爆発だということだが、今回それは防げたとしても放射性物質は漏れ続けており、周辺は高濃度の汚染になっている。最後になって、爆発でなかったから良かったと言えるものなのか?
小出)もちろん心配。環境に漏れる放射能の総量については、どっちが多いかは分からない。ただ爆発で放射性物質が放出されるのは大変なことで、比較の問題だが徐々に漏れる方がありがたい。海は汚されるが、人が住む陸地の汚染は軽減される。

竹内)全部を覆ってこれ以上広がらないようにするのがベスト?
小出)東電が言うように既にメルトダウンしているのであれば、それが最善。

竹内)その方向にいきそうか?
小出)残念ながら今の東電や政府のやり方は混乱しており、この戦争のような状態の中で誰がどんな指揮をとっているのか不安だ。何でもは出来ず、出来る最善のことを一つしかできない状態。そういう決断をしてほしいと願ってきたがそうなっていない。

神保)3月11日以降、事態がここまで至ってしまった原因をどう考えるか?
小出)端的にいえば油断。推進してきた人たちは原発がこのような事故を起こすとは思っていなかった。実際に想定外という言い訳しか出てこないし、何も準備をしていなかったということ。常に後手後手にまわってしまった。

神保)作られた安全神話を信じていた?それとも安全と言ってきた手前、危険を前提とした対応がとれなかった?
小出)両方だろう。絶対安全とは言えなくとも滅多に起こらないだろうと思っていたのだろう。自分が関わっている間には起きないでくれるだろう、と。起きたときの対策については誰も考えてこなかった。

竹内)ドイツやイタリアで脱原発の動きがある。日本ではもっと事故の影響による動きがあってもいいと思うが、日本の脱原発の動きをどう見るか?
小出)40年に原子力を廃絶させたいと発言を始めたが、当時は孤立していた。当時はほとんどの日本人がこれから原子力の時代だと思っていた。ある時から労組を中心とする人たち、原子力施設を押し付けられた地域の人たちが加わってくれたが、それでも小さい声。最近は組織を離れたひとりひとりが自発的な声を上げ始めた。質的な転換をしているのではないかと思うようになった。

神保)電気を使わない生活をされている。早く就寝されるということで前倒しして収録しているが、原発を使って作られている電力をできるだけ使わないという意味か?
小出)それもあるが、もともと電気などそれほど使わなくていいものだし、何が大切なのか、本当に何が必要なのか、すべての人が考える必要がある。

竹内)これから先何が一番恐ろしいか?
小出)こどもたちの被曝。たいへんな汚染が福島周辺でおこっている。一部の人は避難をさせられているが、彼らは二度と帰れないだろう。避難させられていない地域でも想像を絶するような汚染になっており、そういう地域でこどもが生活していることは許しがたいこと。こどもたちを被曝から守らないといけない。

竹内)汚染は小さく伝えられがち?
小出)そうだ。「風評被害」ではなく、現に汚染は起きているし被曝している。食べものも沢山汚染されている。食べものを規制しろと主張したことはないし、生産者を守るためにも大人は食べるべきと私は主張しているが、実際食べものは汚染されている。風評被害ということではない。

神保)これまで先生は異端扱いをされてきたと思うが、警鐘をならしてきた通りの事態が起こり、現在メインストリームになってきている。恐れてきたことが実際に起きてしまったということと、言ってきたことが正しかったことが証明されたということが同時に起っているが、どうか?
小出)全くうれしくない。今回の事故で、私は最終的な決定的な敗北をした。でも、次の悲劇を防がないといけない。今回のことで学んで原発を廃絶してほしいと願っているし、それが成し遂げられるまでは発言を続けないといけないと思う。

コメント

_ おさか ― 2011/06/16 12:54:50

こんにちは。
いやいや、余計なお世話などと申しませんよ。ご心配はありがたいことです。

しかし実は私、midiさんの方が心配。子供が危険、子供を守れ!という魔法の言葉に惑わされすぎてはいませんか?以下長文なので二つに分けます。

何ですか、関西ではもう福島は全部ダメってことになってんですかね。
福島といっても広いですよ?同じ県だからといって一括りにするやり方って、散々批判されていた「同心円」の考え方と同じなんですけどね。
この間、いわきと郡山でしたっけ、小学生の内部被曝検査の結果は問題なし。そもそも野菜も牛乳も検査していて、OKとなったものだけ出荷されています。
この基準がちょっと、という話もありますが、実際に今の時点で、福島県内において内部被曝の数値がこれだけ低ければ、県外ではさらに影響は少ないと考えています。もちろん部分的に高い場所もありますから、注意は必要ですけど。

チェルノの子供の甲状腺ガンの多発は、主に放射性ヨードに汚染された牛乳によるものでしたが、現在の日本の厳しく管理された酪農のやり方と当時のチェルノのそれとは全く違います。同じ時間と手間を使って調べるならそこを調べてみてください。チェルノでは汚染した草を牛に食べさせていたようですし、きのこ類も食べてました。

ちなみに放射能は、あの爆発以来、新たに大量に大気中に放出されたことはない。(福島原発周辺のモニタリング参照:毎日更新されてます。ぐぐれば出ます)
つまり今浮遊している・また地表に溜まっている、のは一定の量のみ。空間線量は、どんどん減っています。ずいぶん前からもう震災前と変わらないレベルです。
ただ汚染された水は海に出ていますから、今後魚は注意しなければなりません。今のところ、コウナゴなどある種の魚や、淡水魚に高い値が出ています。(淡水魚は元々ミネラルを貯めこむ性質があるため、放射性物質も残ってしまいやすい。海水魚は逆に排出する方が多い)

政府や東電は都合の悪い情報を隠蔽しているなどと言われていますが、私の理解では、情報を出すべき時に出しそこね、しかも間違った理解で異なるニュアンスを盛って発表したがために混乱した、だけだと思ってます。だいたい隠蔽や素早い数値の操作が出来るような目端のきく賢い?政府だったら、瓦礫の処理ももっと進んでるはず。
ちなみに、メルトダウンをしてようがしてまいが、メルトスルーだろうがなんだろうが、放出された放射能の量に変わりはありません。
時々、計器の故障や気象条件により、誤った数値がネットで発表されてしまうこともままありますが、すぐにたくさんツッコミが入って、訂正されます。よい時代になったものです。公表された数値が信じられないという人って、そういう動きとか何も見てないんじゃないかな。

_ おさか ― 2011/06/16 13:00:33

続き。

小出准教授というのも放射線医学の専門家ではありません。つまり、放射能が人体に与える影響を熟知しているわけではない。むしろこの記事だけでも、素人同然どころか経済さえもわかってない人だということがバレバレです。電気は元々それほど使わなくていいものだとか…もう開いた口がふさがらない。しかも食べ物は汚染されてると言い切りながら、自分は規制しろとは言わない・大人は生産地保護のため食べるべきなどと、矛盾したことを平気で言ってる。子供に影響があるほど汚染されていると考えているのなら、なぜ規制を叫ばないのか。責任を回避しようとしてる卑怯者としか私には見えない。専門家なら、現地行って、自分で計測してデータとって分析して判断してほしい。発表された数値が信用できないと言うのならなおさらですよ。でも、こういう人ってやんないですよね。

まあ、こんなこと言ってる私も素人ですし個人の意見ですから、鵜呑みにはしないで下さい。と責任回避。私も一人・一つの機関だけを信用することは避け、なるべく多くの情報をみて判断するようにはしています。
小出さんにしても武田さんにしても、まあそういう意見もあるのかなくらいの気持ちでいましたが、あまりに最近酷すぎです。子どもを守れ!という気持ちさえあれば、根拠が薄いことでも何でも言ってもいい、というのは絶対に違う。
命を張って原発で作業している人たちですら急性障害は出ていない事実は目をつむり、データが取れないほど低量の放射線による影響の可能性を、根拠なく声高に叫ぶ人って一体何なんだろうと毎日プンスカしております。

_ midi ― 2011/06/17 01:25:07

こんばんは。っていうか、ただいま(泣)
おさかさん、ありがとう、真剣にたくさん書いてくれて。
明日(というか、今日)、ちゃんと読みます。

_ おさか ― 2011/06/17 09:18:46

すみません、忙しいのに長文コメント。げんなりしますよね(汗)。
放置しといてください。
情報は、いろんなところから満遍なく取るのは難しいです。
日中比較的時間がある私でもそうですもん。

弱っていると判断力も落ちます。
害毒にしかならない情報もたくさんありますから、
とりあえず休むことを優先してください。

_ midi ― 2011/06/18 07:17:43

おはようございます。
おさかさん、たびたびありがとう(笑)
大丈夫です(^^)
今娘を送り出したところ。
昨夜も日付変わってから帰宅したのでPCの前で眠りこけそうになった(笑)
あとで投稿しますね。

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