味噌から出た男2007/06/06 08:53:48

『にせニセことわざずかん』
荒井良二 作
のら書店(2004年)


今や国語の教科書にも採用される好感度抜群画家、荒井良二さん。その世界は、わけわかんないけど、温かくて微笑ましい。いちばんの魅力は、身近な印象を与えることだろう。この人の絵には「芸術」という高位に構えたところがない。全然ない。

20年以上前の話だが、いっとき「へたうま」と称される作風が一世を風靡して、世の中で目につく絵という絵の何もかもが「へたうま」だったことがあった。で、荒井さんだが、この人の絵を見ると、世が世ならその「へたうま」に分類されてひとくくりにされてしまったかもしれないな、と思わなくもなかった、実は。しかし、荒井さんの絵は、画家の絵がみなそうであるように、画面全体でものをいう。目玉と手足のついたソフトクリームだけを見ると「子どもにも描けそう」に思わせるが、そのソフトクリームの影が長く延びてほかの影とお喋りし、その上空で背広を着た月がうたた寝をし、背景には火山どうしが相撲をしているというような絵は、なんの脈絡もなさそうで、その絵本の趣旨を表現して余りある一枚の「芸術作品」なのである。

子どもと絵本を探すようになってから、店や図書館で必ず目につくのが荒井さんの絵のついた本だった。ひょうひょうと、ユーモアをマイペースで突き進んでますよという勢いがありながら、本のテキストをもらさず説明している能弁な絵。

「へたうまイラストレーター」といわれた画家たちのその後は知らないけど、「下手に見せるテクニックをもったうまい画家」だったはずで、あんな下手な絵私にも描ける、と思わせるながら、まずそれは不可能なのである。
荒井さんの絵は、それを見た子どもが真似して描きたくなるくらい親密さにあふれつつ、親切で丁寧で、子どもの理解を助けてくれる。これって簡単な仕事ではない。荒井さんの画業については詳しくないけれど、とりあえず絵本という世界において、荒井さんの絵は、荒井さんの絵にしかできない離れ業をなしとげている。彼の仕事を真似ることは誰にもできない。

我が家にはごくわずかだが荒井さんの本がある。
『にせニセことわざずかん』は、小学校でことわざを習ったかあるいは児童館でことわざカルタで遊んだかして興味を持った娘に本屋で買って買ってえとねだられたものである。

笑える。とにかく笑える。
まず、ことわざを知らなくてはいけないが。
なので、言葉の意味に興味を持ち始めた小学生におすすめだ。

小学生だと、ことわざを会話に織り込んで使いこなすほど理解できなくても、授業の一環でことわざに触れる機会もあり、実際テストにも出るようになる。ウチの娘は、そういうとき、いろはかるたの絵札や、この『にせニセことわざずかん』の荒井さんの絵を思い出すという。まあ、そういう覚え方も、ありだな。でもさ、「にせもの」のほうのことわざ、書いちゃったりしないの? と訊くと、とりあえずにせものを書いて、それをじっと見ながらほんもののことわざは何だっけ、と思い出すの。といっておりました。そうなのか、じゃ君は《馬の耳に大仏》(11ページ)と解答欄に書いてから、その字をじーっと見て、「馬の耳に念仏」という正答を導き出すのだな。それはなかなか、遠回りなように思えるが、ま、いいか。

さてクイズ。この記事のタイトル「味噌から出た男」はにせニセことわざです。ほんもののことわざを当ててください。

コメント

_ おさか ― 2007/06/06 16:58:33

はーい先生、「嘘から出たマコト」でーす。

それにしても荒井良二さん、hpを見てみましたが好み。超好み。なんで今まで気がつかなかったのだろう。でも「馬の耳に大仏」ってどっかで聞いた。もしかして娘なら知っていたりして。

_ midi ― 2007/06/06 19:42:14

おさかさん正解! (簡単か……)
いいでしょ、荒井さん。初心者には『なぞなぞのたび』(石津ちひろ文、フレーベル館)がおすすめだーい♪
『MELODY』(1990年トムズボックス)を手に入れたいけど、なさそー。

_ マロ ― 2007/06/06 22:06:21

ちょっとジャンルは違うけど、言葉遊びの絵本で「へんしんトンネル」というのがあります。
ラッコ、ラッコ、ラッコ…と言いながら、そのトンネルを通るうちに、いつのまにか、コラッ、コラッ、コラッというふうに言葉が変身していくもの。
図書館でばぁばが借りてきたのですが、子供がなぜか大喜び。
返したのでもう家にはないのに、子供はいまだに「ラッコ、ラッコ」などと口ずさんでおります。

それにしても、ちょうこ家には何冊の絵本があるんだー。わが家は10数冊くらい。

_ midi ― 2007/06/07 09:46:18

うわ、それも面白そうですね。五味太郎さんかな?

ウチには200冊はあると思う。絵本だけで。
なぜかというと、保育園で月刊絵本の購読を推奨(強制ともいう)されていたので、しかも1か月に1冊だけではなかったので、5年分で約100冊ある。
私が若い頃から趣味で買い集めていた絵本は何十冊とあるし、お祝いにいただいたり、お下がりをがさっといただいたり、もちろん自分たちで毎年何冊か買っているので、たぶん200冊くらいになると思います。

でもだからって、子どもが読書家になりそうかといえばそうではないところがなかなかに子育ての難しいところなのだ。はい。

_ きのめ ― 2007/06/07 13:08:56

ことわざあそびは上の子とよくやりました。
「尻に屁がつく」「とらとたぬきの皮じゃんばー」
人前で自慢げに言われて、奥さんは赤面してたそうです。
荒井良二さんの本はないかもしれないなぁ。
ところで、このテンプレート、井上葉さんのだったんだ・・・
忙しいわけだ。

_ midi ― 2007/06/07 14:28:33

とらとたぬきの皮じゃんばー、てのは、なんともブラックユーモアですね(^^;)。

そう、このテンプレそうなんです。ほかにもありますよ。
感謝の気持ちも込めてこれ、使ってたんですけどー。
ま、汽車ぽっぽは今月限り。7月から何にしようか迷っています。

_ トゥーサ・ヴァッキーノ ― 2007/06/07 22:40:18

アロエ塗って痔治る。

もとは、「雨降って地固まる」といわれていました。

仏の顔もサンドバッグ

石橋を叩いている渡哲也

あ、調子に乗っちゃいました。
すいませーん。

_ マロ ― 2007/06/07 23:16:08

200冊、すごっ。ちょっとしたミニ図書館ですね。
絵本、選び放題で楽しそう。

「へんしんとんねる」は、幼児向けですね。
五味さんではありません。
言葉をある程度うまく話せるようになった頃の。
絵は僕でも描けそうな感じ。

_ midi ― 2007/06/08 09:37:25

ヴァッキーさん
>石橋を叩いている渡哲也
は、実際やってる本人を想像して笑いました。

マロさん
>絵本、選び放題で楽しそう。
そうでもないんですよね~ けっきょく全部覚えがあるから飽きちゃって。
「へんしんシリーズ」、amazonで見つけました。たくさん出てるみたいですね。「へんしんトイレ」もありましたが、何がどんなふうに変身するのやら。はは。

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