もうこの知性が生きて躍動することはないのだと思うとやはりどう考えても悲しいばかりなのである(その1)――チェチェンニュースから ― 2009/11/05 15:52:18
ドキュメンタリー映画『アンナへの手紙』
エリック・バークラウト監督作品(83分)
情報ページ
http://d.hatena.ne.jp/chechen/20090821/1250863763
日時 2009年11月20日(金)19:00~21:40
会場 文京シビックホール・小ホール
http://www.b-academy.jp/b-civichall/access/access.html
参加費 1,000円
共催:チェチェン連絡会議/(社)アムネスティ・インターナショナル日本
★上映後、トークイベント開催!
特別企画:鼎談「アンナ・ポリトコフスカヤを語る」(仮題)
林 克明(ジャーナリスト)×寺中 誠(アムネスティ日本事務局長)×大富 亮(チェチェンニュース)
チラシ
http://chechennews.org/dl/20091120_anna_leaf_omote.pdf
http://chechennews.org/dl/20091120_anna_leaf_ura.pdf
■『アンナへの手紙』に寄せて ──私たちの希望のためにも
大富亮(チェチェンニュース)
ロシアのジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤ。彼女は1999年に始まった第二次チェチェン戦争を偶然取材するようになり、幾度となくチェチェンに潜入しては、軍事侵攻を続けるプーチン政権を痛烈に批判する記事を書いた。
「どうして私が生きているのかわからない──奇跡だわ」と語る彼女。悲しいことに、その奇跡は世界の見ている前で取り消された。2006年にモスクワの集合住宅で、彼女は暗殺されたのである。
この映画は、生前のアンナへのインタビューや、一緒に独立紙「ノーヴァヤ・ガゼータ」で働いていた同僚たち、人権活動家などへの聞き取りを通して彼女への「手紙」を編もうとする。
ソ連崩壊後、ロシアではほんのわずかの間の民主化と言論の自由があったが、94年にチェチェンへの侵攻が始まって失われ始め、2008年現在、ほぼすべてのテレビ局と新聞は政府の管理下にある。
チェチェン戦争は、南ロシア・コーカサス地方というロシア全体から見ればごく小さな場所で起こっている地域紛争だ。独立を宣言したチェチェン共和国に対してロシア軍が侵攻を開始し、ここに住んでいた100万人ほどのチェチェン人のうち20万から25万人が殺戮され、今は親ロシア派のチェチェン人、ラムザン・カディロフによる傀儡(かいらい)政権が支配している。
生きていた頃のアンナがスクリーンの中で笑っている。あのハスキーな声で議論をするのが聞こえる。講演の合間に、ヨーロッパのどこかの公園を逍遥している姿は、戦争とロシアの現実を訴えて回り、それが「上品な拍手」に迎えられながらも何の結果にもつながらないという絶望をにじませているように思える。
人の死は徐々に忘れられていくけれど、大勢の人を代弁し、その命を救おうとした人の死は忘れられてはならないものだ。それは私たち自身も、そんな人間でありうるという希望を忘れないためでもある。
なお、日本では彼女の著作は「チェチェンやめられない戦争」「プーチニズム 報道されないロシアの現実」「ロシアン・ダイアリー 暗殺された女性記者の取材手帳」の3冊がNHK出版から刊行されている。
●アンナ・ポリトコフスカヤ
ロシアのジャーナリスト。1958年生まれ。1980年、国立モスクワ大学ジャーナリズム学科卒業。モスクワの新聞「ノーヴァヤ?ガゼータ」紙評論員。1999年夏以来、チェチェンに通い、戦地に暮らす市民の声を伝えてきた。「ロシアの失われた良心」と評され、その活動に対して国際的な賞が数多く贈られている。2004年、北オセチアの学校占拠事件の際、現地に向かう機上で、何者かに毒を盛られ、意識不明の重態に陥った。回復後、取材?執筆活動を再開する。2006年10月7日、モスクワ市内の自宅アパートで、凶弾に倒れた。著書に『チェチェンやめられない戦争』(NHK出版)など。