C'est moins intéressant qu'avant.2011/10/03 22:08:17

『トゥルー・ビリーヴァー』
ヴァージニア・ユウワー・ウルフ著
こだまともこ訳
小学館(2009年)


『レモネードを作ろう』の続編。
ヒロインのラヴォーンは15歳になっている。
続編といっても、本書の物語は完結しているので、
『レモネードを作ろう』を読んでいなくてもこれはこれで楽しめる。
楽しめる、といったが、
『レモネードを作ろう』に比べるとかなりつまらない。
『レモネードを作ろう』が、けっこう、
米国に点在するスラム街に潜む、
相変わらず解決されていない問題をあぶりだすと同時に、
それでも解決しようと多くの人々や組織が、
積極的な動きを見せていることを、
物語のベースで語っている……という意味で
読み応えがあったといえるのに比べて、
本書『トゥルー・ビリーヴァー』は、
軸になっているのがヒロインの純粋な恋心だったりするので、
いくら米国社会の病巣をやはり描いている、といっても、
訴求力はかなり弱いといえばいいだろうか。
で、こんなふうに、前作同様、
文をブツ切って書かれているので、
やっぱ女子高生のつぶやきとゆーか、
ケータイブログ見ているみたいというか、
若干じれったくてイラつく挙げ句に
ヒロインの恋はなーんだありがち、な感じで終わる。
ヒロインの母の恋もなーんだありがち、な感じで終わる。
だから私などはつまらねえ、と思う。

いや、しかし。

それでも、日本のティーンエイジャーに読んでもらいたい!
と強く思う。
そのわけは、ヒロインのラヴォーンが、
将来、面接試験を受けたり、大学進学や就職をして、
社会へ出るときのために、
「正しい話し方」の授業を受けるシーンが
頻繁に出てくるからである。
原書では当然「正しい米語文法」を教師が教えているはずだが、
訳者はみごとに、現代の日本語の乱れをそれに呼応させ、
我が国の、めちゃくちゃな若者(ばかりではない)の言葉遣いに
間接的に警鐘を鳴らしている。
日本の中高生、必読。
たぶん君たちなら、面白く読めるんじゃないかな。
『レモネードを作ろう』は、
ちょっと日本の状況とはかけ離れていたけれど、
本書はもう少し自分に引き寄せて読めると思う。
でも、恋の行方はとってもアメリカ的だけどね。
両作とも、出版社はそれぞれ「感動の大作!」なんていってるけど、
それほどでもない。
どちらも、等身大の物語でありながら、日米の文化の違い、
社会の違いをこれでもかと知らされる内容だから、
ある人にはショッキング、ある人には「ついてけねえー」、
ある人には織り込み済み、または関心外だろう。
それでも両作とも読む価値はあるよ。

このヒロイン、ラヴォーンの物語は3部作らしい。
次の物語では、ラヴォーンはさらに成長しているだろう。
私としては、もうちょっと脱線してもらいたい。
この2作とも、ヒロインはいい子過ぎる。
周りがハチャメチャなので、
ヒロインの常識人ぶりが不必要に際立つ。
大人にぐっと近づく前に、ぐたぐたべこべこになった
ラヴォーンを書いてくれたらもう少し読む気が起こるかも。


さて、作家志望の諸君のために著者紹介。著者はあのヴァージニア・ウルフとは全然関係なくて(まだゆってる)、こんな人である。どっかのサイトの引き写しでごめん。作家としては遅咲きみたいよ。

ウルフ,ヴァージニア・ユウワー
Wolff, Virginia Euwer
オレゴン州ポートランド生まれ。大学を卒業してから結婚し2児をもうけた後、小学校、高校で英語を教える。後に離婚。50歳を過ぎてから執筆をはじめ、現在は教職をやめて作家活動に専念し、ヤングアダルト向けの作品を書き続けている。デビュー作品で国際読書協会賞ほかを受賞して以来、数々の賞を受賞している。邦訳は『レモネードを作ろう』(徳間書店)。

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