Poisson d'avril2014/04/01 22:23:05

音楽を聴くのに飽きてiTunesをラジオに替えて適当に押したらFrance Infoが鳴ったんだけど、ちょうど新首相の任命式典の実況中継をしていた。これ、ほんとの話なのかな。だって今日はPoisson d'avrilだもんね(笑)。で、報道サイトをいくつか見るとどこも一様にマニュエル・ヴァルスの着任を報じているので、どうやらほんとうの話のようだ。1962年生まれ。ふーん。若いねえ。それにちょっとダニエル・オトゥイユに似てる……。うん、似てる似てる♪ しばらくオトゥイユの出演映画を観ていないからかもしれないけど(笑)、うんうん、ヴァルス君、オトゥイユに似てると思う!

けさ、友達に会いに行くために阪急電車に乗ったんだよ。そんなに混んでなくて、座席はぽつ、ぽつ、と空いていて、どっちに座ろうかなとほんの百分の一秒迷ったね。私の前にいた若い女の子がためらわずすたすたすたと進んで車両の真ん中あたり、同じような若い女性とおぼしき茶髪の頭部が見える座席の隣にすっと座った。それにつられて私も前に進みそうになり、茶髪ガールのすぐ斜め後ろに空席を見つけたのだけれど、ふとその空席の隣にはすでに背広の男性が座っていた。う、と思って自分のすぐ脇を見下ろすとそこにも空席があり、その隣を占めていたのも背広の男性だった。私はそれ以上前に進むのをやめて即座にすぐ脇の座席に身を沈めた。茶髪ガールの斜め後ろの背広と、今や私の隣にいる背広との違いは、前者はオヤジで後者は若者であるという違いに他ならない。前者がオヤジであるとなぜわかるのか、座席の背もたれ越しに頭が見えるだけなのに、とおっしゃるのかね。頭で十分だよ、いうまでもないだろ、ハゲなの、ハゲ。きれいなスキンヘッドならさ、これまたちょっと話は違うんだけどね、その背広氏のハゲの直径は7センチくらいで、中途半端にとてもハゲだったさ。私はね、車窓から沿線の桜を眺めたかったのよ。阪急沿線には桜が多くて、通勤していた時代にも、この季節は車中花見が楽しみだった。通路側に座ったら、隣の誰かの横顔越しに窓の外を見ることになるから隣の誰かが誰であるかは重要なのである。そこしか空席がなかったら、私ももう年増やけん、ハゲでもスケベでも座ったが、ここに若い男の子がいるのになんで座らない理由があろうか。したがってハゲは却下。
若い男の子といっても特別にイケメンだったわけではない。座って車窓を見るふりしてその横顔を舐めるように(笑)眺めたが、好みにはほど遠い(ごめんね。あ、前の背広氏もごめんね。ハゲに罪はないのよ)。そして、驚くべきことと言うべきかどうかわからないが、彼(に限らないと思うけど)はほとんど微動だにせず、動かすのはスマホの画面を滑る指だけだった。ほんとにぴくりともせず、右手の指だけが、四角い薄っぺらい機械の上をすっすっと動くだけなのだ。彼は梅田のひとつ手前の十三で降りたが、「次は十三〜」のアナウンスが流れて初めて指の動きを止めて膝に置いていた鞄を持ち上げ、一度座り直し、上着を直し、立ち上がり私の膝の前をすり抜けるように去った。……のだがそれだけが私の見た彼の「人間らしい動作」で、「次は十三〜」があるまで、すっすっ……すっすっ……だけだったのである。これ、なかなかすごいことである。そんなに集中できるのね、スマホ操作に。
帰りの阪急電車の中では、向かい合った4人座席のひとつに座ったが、私以外の3人が全員、行きの電車の彼と同じことを始めた。全員を間断なく観察していたわけではないけれども、すっすっ……すっすっ……3人ともすっすっ……すっすっ……すっすっすっ……おおお、まったくすごい集中力。目がよってるよお嬢さん。ぴくりとも動かずに何かに熱中するそのエネルギー、ほかの何かにつかったほうがいいんじゃないの。

相変わらずラジオはマティニョン宮に到着した新首相のことばかり喋っている。ああ、ダニエル・オトゥイユの映画、観たくなったよ。すごく観たくなったよ。

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